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(1)青田買い

増える入学前教育
AO入試で合格した高校生らから郵送されてきた課題のリポート。入学前教育を課す大学が増えている(京田辺市・同志社女子大)
 昨年12月末、今春に同志社女子大に入学が決まった高校生ら53人が京田辺市のキャンパスに集まり、泊まりがけで英語のテストや小論文の作成などに取り組んだ。
 同大学は、志望動機の作文や面接などで合否を決めるAO(アドミッションズオフィス)入試の合格者を対象に、2003年度から合宿形式の学習を続けている。英語の通信添削や学科ごとのリポート提出など、「宿題」も課す。入学式も終えないうちに大学生活が始まった形だ。
 入学センターの川村俊哉事務長は「学力試験をしていないので、入学生の英語力などを知る必要がある。学力を一定レベルまで引き上げる狙いもある」という。
 受験生にとっては、合格から入学までは一息つける時間のはずだが、参加した山口えりかさん(19)=長崎県佐世保市=は「米国留学の夢をかなえるには、大学で良い成績を取らないといけない。一般入試の人との競争もあり、入学まで勉強を続けたい」と話す。
 2月に入り、大学入試が本番を迎えているが、受験生の実に半数が、昨年末までにAOや推薦入試で合格を決めている。一般入試を受けない受験生は年々増えており、文部科学省によると、AO入試による入学者は06年度は約3万3000人で全体の7%を占め、推薦入試は42%に達する。
 「他大学に流れる前にできるだけ多くの入学者を確保しなければ」。ある私大の入試担当者は明かす。少子化で受験生が減少しているうえ、国は募集定員に達しない私大の補助金を削減する方針を決めており、学生獲得は死活問題だからだ。
 京都では、AO入試で一部学部の募集人員のほぼ半数の合格者を決める大学も現れた。推薦入試と合わせると、合格者が募集人員を超える極端なケースもあり、入試の形は大きく変わっている。
 入学前教育が必要とされるのはその裏返しだ。入試を経ない学生が増えると、学力レベルにばらつきが出て、入学しても講義についていけないケースもあるからだ。
 龍谷大(京都市伏見区)は、推薦入試の一部の合格者に、英語や数学などから1、2科目を選んで通信添削を受けさせている。昨春から、授業時間などを削減した「ゆとり教育」を受けた高校生の入学が始まったのがきっかけだ。担当者は「どの程度の学力の学生が入ってくるかつかみづらく、大学の講義にスムーズに入れるようにしたかった」と説明する。
 一方、立命館大(中京区)は「入学まで長い期間があり、合格時の熱意や学習への意欲を下げたくない」といい、大手予備校と連携して英語や数学の通信添削などのメニューを用意している。
 大学にとって学生の「量」とともに「質」の維持が迫られる時代になっている。
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 少子化と大学の増加で、計算上は大学や短大への進学希望者が全員入学できる「全入時代」が今春にも始まる。各大学は学生確保のためさまざまな手を打ち、「学力低下」や就職難などから大学への期待も多様化している。競争が激しさを増すなか、生き残りをかける大学の現状や課題を探る。
【2007年2月16日掲載】