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公の多様化 地域、学校の格差拡大も

学校教育のゆくえ(4)
「教科書以上」の教え方を工夫する第四錦林小の算数授業(京都市左京区)
 第四錦林小(京都市左京区)教諭の篭(かご)敦子は三つの折れ線グラフを黒板に張り出した。那覇、京都、釧路各市の一日の気温の変化を示す。「このグラフに共通することは何?」。四年生の子どもらはグラフを見比べ、「縦軸が気温」「気温がぐんと上がると、線もぐんと上がる」とノートに書き出した。
 折れ線グラフの特徴は、教科書では一つのグラフで教えることになっている。あえて三つのグラフを示したのは「知識をただ与えるのではなく、自分の頭で考え表現するよう意図的に仕組んだ」(中島繁雄校長)からだ。
 経済協力開発機構(OECD)が十五歳児を対象に実施する国際学習到達度調査(PISA)で日本の順位低下が問題になっている。中島は「与えられた材料を読み解き、必要な情報を取り出して、活用する能力」といったPISAが求める力を念頭に、「教科書以上の授業を目指す」という。国語をはじめ各教科で言語力の強化を要求する新学習指導要領も意識する。
 学習内容を広げるだけでなく、私学には負けじと授業時間を増やす公立校もある。六月に約二千二百人が参加した洛北高付属中(左京区)の学校説明会で、校長塩見均は「学習指導要領以上の授業時数」を繰り返し強調した。
 科学の専門家らに学ぶ独自教科「洛北サイエンス」の設置や主要教科の重視で、中学一年から現行要領の九百八十時間を大幅に超える千百五十五時間の授業を行う。「中高一貫校では全国トップクラスの学力」など華々しい説明に、「同じ公立なら洛北に行かせたい」と子ども以上に熱心な親の声が聞かれた。
 学習時間を増やす動きは公立小でも顕著だ。中京区の御所南小では昨年度から新科目「読解」を各学年に設けた。左京区の静原小は夏・冬休みとも連日、計画学習の時間を設け、基礎学力を鍛える。
 下京区の中学校教諭は「学校で指導要領通りに勉強するだけでは、(京都の公立高で最難関クラスとされる)堀川高探究科の入試問題は解けないのが実情」と打ち明ける。
 文部科学省が〇一年に「最低基準」と宣言した現行要領に基づき、授業時数や内容の多様化が進んだ。「教育の多様化はゆとり教育の成果」という声の一方、新要領の作成を主導した中央教育審議会副会長(兵庫教育大学長)の梶田叡一は「多様化が行き過ぎ、地域や学校で格差が開いてしまった」と指摘する。
 その上で、梶田は導入にかかわった昨年からの全国学力テストに触れて「それぞれの格差を数値で示し、遅れた学校や地域を底上げして学力のすそ野を広げるためだ」と狙いを語る。
 京都では来春から、京都市・乙訓地域(現・四通学圏)の高校入試制度が来年度から変わり、T類の一部とU類で全校を志願できる「実質一通学圏」となる。新学科設立を宣言する高校が相次ぎ、特色を競う流れが加速する半面、高校の序列化が進む危惧(きぐ)もささやかれる。  多様化と格差。そのはざまで公教育が揺れている。(敬称略)
<公立中高一貫校>  学校教育法の改正で設立可能となり、京都では2004年度に府立洛北高と、京都市立西京高、06年度に府立園部高が付属中を開校。特色ある教育、私学より安い学費などで人気は高い。「適性検査」の名で行う入試は有名私学と同様に難解で、「現実として塾での受験対策が必要」(公立小教諭)という。
【2008年7月24日掲載】