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序列化 単独選抜が生む格差

第1部 山城通学圏の3年
難関大合格を目指し、予備校講師の講演を聞く生徒たち(木津川市・南陽高)
 「国公立大100人を超えたら京都大、大阪大、神戸大合格の倍増、3倍増はいつでも狙える。受験は団体戦だ」。4月18日、府立南陽高(京都府木津川市)の進路をテーマにした総合学習の授業で、講師に招かれた駿台予備学校の担当者が3年生にげきを飛ばした。京都大など難関国公立大を目指す約70人が真剣な表情で聞き入った。
 南陽高は今春、現役で京都大2人、大阪大2人、神戸大7人を含む過去最多の国公立大合格者118人を達成した。「山城通学圏のトップ校として3けたは悲願。これで京都市内に流れていた学力上位層を取り戻したい」と、進路指導部長の小畑順二教諭は話す。これまでは6年前の89人が最多だった。
 府内全域から募集できる専門学科を置き、難関大の進学実績で知られる府立嵯峨野高京都こすもす科(京都市右京区)一期生の104人、京都市立堀川高探究科(中京区)一期生の106人、同西京高エンタープライジング科(同)一期生の106人を超える数字をたたき出したのは、単独選抜一期生だった。
 2004年度入試から南北2つに分かれていた宇治市以南の山城通学圏が統合され、それまでの総合選抜から単独選抜に変更した。「生徒の選択肢を拡大する」(府教委)とうたった新制度で居住地にかかわらず、府立高12校から選ぶことが可能になった。
 南陽高の新入生が毎年7月に受ける模試の偏差値をみると、総合選抜だった03年度は60以上が81人、70以上が13人だったのに対し、単独選抜を導入した04年度は60以上が116人、70以上が19人に増加した。隔週の土曜学習などの成果もあるが、「国公立大118人」は学力上位層を厚くした単独選抜と切り離せない。
 半面、複数の学校では上位層が他校へ流れ、下位層が厚くなった。「中間クラスの学校を境に、生徒の学力層が上位に集まる学校と下位に広がる学校に分かれた」(高校教諭)という指摘は、入学直後の新入生を対象にした府立高の統一テストの結果にも表れている。
 今年度の山城通学圏の入試では京都八幡高と城南高、西宇治高の3校で定員が減り、久御山高や城陽高など5校で増えた。中学3年生に対する山城通学圏の公立高全体の定員割合は昨年度と変わらないが、ある中学校長は「全体として学力的にしんどい子の選択肢が狭まった」とみる。
 南陽高生徒の出身中学校数は03年度の24校から04年度の32校に広がった。他校でも中学校数は増加し、「選択肢の拡大」は表面上、実現された。しかし、学力による序列化で「生徒は行ける学校を選ばされている」(中学教諭)との見方もある。
 代々木ゼミナール京都校の担当者は指摘する。「入り口(入学する高校)で出口(進学先)が決まる。その傾向はますます強まり、山城通学圏でも二極化が進むだろう」
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 高校進学率が100%近くなり、高校生の学力や家庭環境は多様化した。一方、少子化の進行で公立、私立を巻き込んだ生徒争奪戦も激化している。「高校はどこへ」では岐路を迎えた高校の現状を追う。第1部は学力による学校の序列化を進め、教育の効率化を図る風潮が全国的に主流となる中、3年前に学区を統合した山城通学圏から公立高の在り方を考える。
(社会報道部 有賀美砂)
5回掲載の予定です
<総合選抜と単独選抜>
 総合選抜は京都市と乙訓地区からなる4通学圏で実施。学力検査と報告書で合否が決定され、志願者の居住地によって入学校が振り分けられる。単独選抜は志願校ごとに選抜し、府内では山城通学圏で04年度から導入された。