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伸びしろ 能力アップ工夫次第

第1部 山城通学圏の3年
進路社で自主学習する3年生。年間900時間を超える生徒もいる(宇治市・東宇治高)
 放課後の東宇治高(京都府宇治市)。3年生が一つの教室に「出社」してくる。問題集を開き、ひたすら鉛筆を走らせる。屋外で部活動に汗を流す下級生の声だけが聞こえる。午後7時、出勤簿に退社時刻と学習時間などを書き込み、校舎を後にした。
 「公立大に進んだ1年上の彼氏が座っていた席を毎日絶対に譲らず、見事、同じ大学に合格した女の子もいましたね」と話すのは進路指導部の小野真太郎教諭。4年前から自習室を「進路社」と名付け、出勤簿に記録させることで、自主学習の習慣化を図っている。小野教諭は「年間900時間を超える子もいる。記録が自信につながる」と語る。
 今春、東宇治高を卒業した単独選抜1期生160人のうち48人が国公立大に現役合格した。3年前、1期生が入学直後に受けた府立高の統一テストで偏差値60以上は26人。「国公立大を狙うには62−63は必要」(府立高校長)とされるが、2倍近くの生徒が国公立大に進んだ。入学後に学力が伸びた証しと言える。
 「東宇治高は学力上位校ではないのに、なぜそんなことができるのか」と、兵庫県の県立高教員は3度も足を運んだ。3月末で退職した木村滋世前校長は「単独選抜で上位、下位層とも他校へ流れ、学力層が均質化した。多くの生徒を、競い合いながら上の大学を目指す同じ土俵に乗せる指導ができた」と説明する。
 今春の卒業生は75%が土曜学習に加わった。小さな成功体験が入試本番の糧となるよう、英検や漢検などの資格試験を積極的に受けさせた。生徒の8割が登録する進路社で10回以上集会を開くうち、いつしか参加者は「同志」になったという。
 木村前校長は言う。「専門学科など優秀な生徒を獲得する『入り口』ばかりにエネルギーを注ぐ風潮があるが、ちょっとした戦略があれば、普通科でも大学進学実績の『出口』でハッと思わせる学校にできる」
 一方、田辺高(京都府京田辺市)では今年度の新入生から地理を必修化し、1学期を中学校の復習に充てる。
 「今日は3大洋と6大陸です。中学校の知識の上に高校の知識を積んでいくのだから覚えてもらいます」
 八田哲郎教諭はワークシートを使って指名した生徒に答えさせながら、高校レベルの地理や世界史の基礎となる用語を確認していく。40分後、20問の小テストを行い、学んだ内容を理解しているかをみた。
 「単独選抜で生徒の学力層が定まった。目の前の生徒の実情から教育内容を変えていかなければ、高校でつけようとする知識は『砂上の楼閣』になってしまう」と八田教諭。評価には小テストの点数を直接反映させず、「生徒が自分で能力を高めていく過程」を大切にするつもりだ。
 「生徒一人一人の可能性『伸びしろ』をどこまで伸ばしてやれるかが大切だ」と東宇治高の小野教諭。八田教諭の思いとも重なる。
<土曜学習>
 学校週5日制が実施されて以降、公立高では自主学習の定着を図る土曜学習が主流になっている。山城通学圏でも東宇治高がアカデミックサタデー、南陽高が土曜学習会、莵道高が莵活などの名称で実施。学校の特色化につなげている。