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公立の役割 多様な生徒どう対応

第1部 山城通学圏の3年
特進ゼミの開講式。出席した保護者に対し、朝食の摂取や睡眠時間など生活習慣の重要性も強調した(八幡市・京都八幡高)
 「中学卒業段階で開発されている能力は大したことはない。肝心なのは、どの高校に入ったかではなく、3年間でどんな学習をするかです」
 今春、八幡高と南八幡高が統合して誕生した京都八幡高で、小田垣勉校長は会議室に集まった1年生と保護者24組を鼓舞するように訴えた。4月19日夜に行われた「特進ゼミ」の開講式のひとこまだ。
 特進ゼミは京都大など難関国公立大を目指す一部の生徒の受験をサポートするため、昨年度から始めた。専任教諭が週3回、専用ゼミ室で個別に指導する。学習塾さながらに毎週土曜日のテスト会や夏休みなどの集中学習会、年数回の模試もある。小田垣校長は「公立には経済的なハンディを背負った生徒もいる。塾に行かなくても塾のノウハウで大学合格につなげたい」と説明する。
 単独選抜で学力による高校の序列化が進み、各校では生徒の学力差が縮まったが、京都八幡高など一部ではむしろ広がった。そこで統合前の八幡高は、習熟度別に分けた講座制の授業を導入した。京都八幡高もアドバンス、ユニバーサルの2コースにそれぞれ発展、標準講座、ユニバーサルには基礎講座も加え計5講座とした。特進ゼミはアドバンスの発展講座31人から希望を募った。
 八幡高の特進ゼミ1期生が昨年4月の入学直後に受けた府立高の統一テストの平均点順位は全114類型・学科の中で58位。ところが8カ月後、一気に35位に跳ね上がった。入試では太刀打ちできなかった高校の学力レベルに迫っていた。
 一方、ユニバーサルの基礎講座で学びながら、さらに補習が必要な生徒がいる。特進ゼミ生と同様、専任教諭が個別指導する。これらの取り組みで、単独選抜が初実施された2004年度の中退者35人に対し、06年度は23人に減少した。
 小田垣校長は「100%近い進学率と各家庭の経済格差を反映し、公立高は多様な生徒を受け入れなければならない。従来の類・類型制では柔軟な対応が難しい」と話す。
 山城通学圏の単独選抜は普通科I類(学力充実)、II類(進学)を一括募集し、希望などに応じて入学後に振り分ける。入学校が居住地で振り分けられていた総合選抜では入学する生徒の学力差が大きく、I類とII類の役割分担が明確だった。
 しかし、単独選抜で生徒の学力層が収れんした高校では類を分ける意味が希薄になった。難関大を目指す生徒は普通科型の専門学科に進む傾向が強まっており、II類の人気低下を招いている。一方、学力差が拡大した高校は「類・類型制だけでは不十分」なのが実情だ。
 単独選抜の導入によって山城通学圏の府立高の「入り口」は序列化したが、生徒の実態に即した教育に取り組めば「出口」は豊かになる。単独選抜が公立高教育の幅を広げ、生徒一人一人の可能性を引き出せるよう現行制度の再考も必要だろう。
(第1部おわり)
<類・類型制>
 山城通学圏の公立高にはI類(学力充実)、II類(進学)、III類(体育系)が置かれている。単独選抜導入でI・II類を一括募集し、希望などで振り分けるようになった。しかし、II類の希望者が定員を下回る傾向が強まっている。