京都新聞TOP > 文化・文芸・教育アーカイブ >高校はどこへ
インデックス

自分を見つける 「待つ先生」に励まされ

第2部 朱雀高からの報告
9月の文化祭に向け、演劇の台本読みをする3年4組のメンバー。受験生にとって勉強と文化祭準備との両立は簡単ではない(京都市中京区・朱雀高)
 期末テストが終わった7月中旬の朱雀高。3年4組の教室で9月の文化祭に向けて、演劇の練習が始まった。「読み合わせをするので、キャストの人は来てください」と、脚本を書いた村川千咲さん(17)が呼びかけた。戦艦大和に少女が同乗していたという設定の原作をベースに、映画「男たちの大和」も参考にした。
 舞台練習やリハーサルと本番までスケジュールはびっしり。受験を控えているが、「文化祭と両立させなあかんから、勉強にも気合が入る」という。脚本で苦しんでいた時、「気付くとパソコンの前に座ってる自分がいて、やっぱり書くことが好きなんだなあと実感した」。そこで、大学からマスコミ業界を目指す進路がはっきりと形になった。
 「生徒に進路を意識させ、学ぶモチベーションをどう維持するかが悩み」と、進路指導部長の桂幸生教諭は話す。例年、入学時には国公立大志望者が40−50人いるが、今春の進学者は3人、昨春はゼロだった。
 東西南北の4つに分かれた京都市域の通学圏のうち、居住地で振り分けられるI類総合選抜の合格最低点は朱雀高のある北通学圏が最も高い。そのため、中学校からは「I類に成績のいい子を送ったのに伸ばしていない」「進学実績があまりよくないため、朱雀は敬遠される」といった苦言も寄せられる。
 大学進学の意欲を持たせようと、私立大担当者を招いた対策講座で3年生にげきを飛ばし、2年生全員に模試受験も課す。ただ、生徒アンケートで世の中のイメージについて「学歴がものをいう」と答えたのは20%前後。教務部長の島貫学教諭は「いい大学に行かなければ、いい人生は送れないという脅しでは、生徒の心の根っこをくすぐれない」とみる。「学校という社会で自主的な行事を通じて、現実に踏み出せる力を養うことこそ大切にしたい」
 最大の行事が文化祭だ。3年の森かれんさん(17)は昨年、いつも教室の隅で本を読んでる男子生徒が、√の入った複雑なモニュメントの設計図を見ながら、黙々とくぎを打つ姿に心動いた。「勉強だと数字でしか評価されないけど、行事はその人の個性がわかる」
 企画から実行まで主役は生徒。先生は関与しない。戸惑いもあったが、「先生が待ってくれていたから、今では自分らで考えることができる」と森さん。将来は教師が志望だが、「自分はすぐ口出ししそうで朱雀の先生は無理」と笑う。
 一方、先生には裏方の苦労もある。「教師がレールを敷いていないか」「生徒を突き放す瞬間の見極めは」と自問を繰り返す。ある先生は「教科なら教師は正解を知っているが、自主活動は生徒と同じレベルで悩み、考える」と言う。
 さまざまな個性や一人の大人としての先生と接することで、生徒が成長していく−。そんな高校の側面は、進学実績だけでは計れない。
<世の中のイメージ>
 朱雀高の生徒アンケートで、「資格・技能などがものをいう」と答えた生徒数がトップ。2位は「努力しても報われない」、3位は「学歴がものをいう」、4位は「チャンスを生かした者が成功する」。「努力したら報われる」は最下位だった。