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通う ありのままいられる

第2部 朱雀高からの報告
部活を通じて、高校に「居場所」を見つけられる生徒も少なくない(京都市中京区・朱雀高)
 朱雀高の音楽室にピアノの音色が響き、いつものように音楽部の練習が始まった。「アメージンググレース」で部員9人の声が重なり合う。低音部を受け持つ2年の浦野晴生君(17)は、2006年度入試から設けられた長期欠席者特別選抜で入学した10人のうちの1人だ。
 友達関係で悩み、中学1年生の2学期から約1年間休んだ。欠席日数が多くあきらめていた公立高だったが、内申書を用いない特別選抜の存在を知り、「入試を頑張ろうという気持ちになれた」と振り返る。
 朱雀高の生徒は、T、U類を分散した学力別でないホームルーム(HR)単位で行事に参加し、授業は類別で受ける。「中学校は同じ教室で同じ顔触れという枠がきつかった。朱雀にはいろいろな場面がある」と浦野君。「落ち着くのは音楽部の友達がいるHRかなあ」
 別の男子生徒(17)も「一年間通えたなんて自分でも『行けたー』って感じ」と笑顔を見せる。彼が特別選抜で入学したことを周囲の生徒はほとんど知らない。教師もほかの生徒と同様に接する。「どの先生も僕の事情を知ってる、何かあれば助けてくれるという安心感がある」。いじめを発端に行かなくなった中学校に対して「騒ぐだけで何もしてくれなかった」という思いがあるだけに、「特別扱いではなく、見守ってくれているのがうれしい」という。
 養護の佐藤友子教諭は「子どもは変わる。自分の居場所を見つけたら学校で暮らしていける」と話す。
 一方、学習障害(LD)や注意欠陥多動性障害(ADHD)など発達障害の子どもへの「特別支援教育」が全国の学校で進められている。高校でも学校不適応や学業不振の背景に発達障害が疑われるケースがあるが、問題児として扱われることも少なくない。「気になる生徒」にどう向き合うか。朱雀高が掲げるのは「特別でない特別支援教育」だ。
 「ADHDの生徒は遅刻や忘れ物のオンパレードだが、いいところを見つけてあげてほしい」「アスペルガー症候群の生徒も肯定的な評価で自尊感情を与えて」…。発達障害が疑われる生徒の言動について専門家の助言を先生たちが共有し、集団の中で支援する体制を模索する。
 「気になる生徒」の背景は発達障害にとどまらない。家庭環境の多様化などを背景に「攻撃的な態度でかろうじて自分を保っている子、学校に来ないことで親の関心を引こうとする子」も少なくない。
 欠席した時間数が規定を超えると留年になるが、家庭環境など生徒の力だけでは対処できない場合は配慮する制度もある。ただ、親からの虐待などつらい体験も話さなければならず、「生徒と教師の信頼関係が問われる場面だ」と佐藤教諭。「中学校までは教師や親が決めるが、高校は大人になる手助けをする場。子どもがありのまま、自分らしくいられるように援助してやりたい」
<長期欠席者特別選抜>
 2006年度の公立高入試から朱雀、城陽(定員10人程度)、西舞鶴(同5人程度)の府立3校に導入。中学校で年間30日以上の欠席がある不登校生徒の進路選択を拡大するため、内申書を合否判定に用いない。07年度は3校に計46人志願した。