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水増しの背景 矛盾生む「進学実績」

第3部 生き残りかける私学
激しい生徒獲得競争で優位に立つため、大学合格者数を前面に出す私学(京都市左京区・東山高)
 8月30日、京都府の調査で府内私立高8校が今春の大学入試で受験料を負担し、成績優秀な生徒に複数受験させていたことが分かった。進学実績の「水増し」にあたるとして、府は改善を指導した。そのうちの1校、東山高(京都市左京区)の福地信也副校長は「私学は進学実績数を求められる。生徒が集まる材料になる」と理由を話す。
 有名私大などはセンター試験成績で合否を決める枠を持つ。成績優秀な生徒は受験料だけで合格が得られる仕組みだ。東山高は2001年春から、進路指導費の100万円を受験料負担に充て、今春は24人に関西大、関西学院大、同志社大、立命館大の182学部・学科を受けさせた。福地副校長は「制度がある以上、利用するのは当然。生き残るための企業努力だった」と打ち明ける。
 背景には、少子化で厳しくなる一方の生徒獲得競争で、優位に立ちたいとの思惑がある。
 府私立中学高校連合会によると、府内私立高の07年度在籍生(5月1日現在)は17年連続減の約2万8000人。第2次ベビーブームのピークにあたる1990年度の59・3%まで落ち込んだ。
 一方、府と府教委が発表した本年度の学校基本調査(速報)で、公立高を含めた大学進学率は63%と過去最高を記録、8年連続で全国首位を走る。特に、府内全域から入学できる専門学科を設けて難関大への進学実績を上げる京都市立堀川高(中京区)、府立嵯峨野高(右京区)など公立高の人気が高まり、公私間で中学3年生をめぐる綱引きが激化している。
 東山高が受験料を負担した06、07年は、国公立大を目指す理系、文系の少人数クラスを設けた一期生が受験した年と重なる。国公立大の合格者は06年38人、07年65人と着実に実績を伸ばした。福地副校長は「系列大学を持たない東山は進学校として生き残るしかない」
 平安女学院高(上京区)は今春、特進コース9人に160学部・学科を受けさせた。99年度に1090人いた全校生徒は、07年度にわずか314人(いずれも5月1日現在)まで激減した。井上溪子副校長は「生徒数の減少で得にくくなった合格ラインのデータが欲しかった」としつつ、「合格すれば進学実績がPR材料になる」とも明かす。
 ある私立校長はこぼす。「私学には公立と違う特色や教育方針があったが、今はないに等しい。合格実績という物差しだけで学校の価値を示す傾向に走り、自己矛盾を起こしている」
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 急速な少子化を受け、公私立を巻き込んだ中学3年生の争奪戦が激しくなっている。特に私立高は人気校が固定化する傾向が強まっている。進学実績や特待生制度の拡充、大学との連携を深めて優秀な生徒を呼び込むのに懸命だ。京都の私立高の現状を追いながら私学教育の在り方を考える。
4回掲載の予定です
<受験料負担> 今年7月、大阪市内の私立高が昨春の大学入試で、受験料を負担して生徒1人に計73学部・学科を受けさせたことが分かった。合格延べ人数だけを公表し進学実績があるように装ったことが問題となり、全国の私立高でも相次いで発覚した。