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特待生への思惑 捨て身の経営戦略

第3部 生き残りかける私学
特進クラスの数学の授業。来春から新たな特待生制度を導入し魅力を伝える(京都市左京区・ノートルダム女学院高)
 9月11日、ノートルダム女学院高(京都市左京区)で塾関係者への来春の入試説明会が開かれた。学校が三年間の授業料を免除する特待生制度を紹介すると、会場の雰囲気は一変した。ある塾経営者は「府内の私学でも飛び抜けている。思い切ったものだ」と驚く。
 同高は2006年度、五年ぶりに外部からの一般入試を復活させ、普通科に特進コースを新設した。難関国公立大への進学実績を伸ばしている府内の一部公立高や他の私学に対抗する狙いだった。
 過去5年間、国公立大に毎年30人前後が進学している実績や「京都のお嬢さま学校」というブランド…。「一般入試を再開すれば生徒は集まる」自信があった。
 ところが、志願者は募集定員90人に対して33人、07年度も80人に対して28人と半数にも満たなかった。
 新しい特待生制度は、「起死回生の策」(鎌田論珠校長)だ。入試成績上位の数名に限って1年間授業料を免除する従来の制度とは抜本的に異なる。すべての受験生に門戸を広げ、定員枠も設けない。一定の成績を満たせば誰でも3年間の授業料を免除する。鎌田校長は「特待生として扱われることが分かれば、受験しようという動機につながる」と期待を込める。
 近く開く入試説明会には、公立高で進学実績トップを走る堀川高の校長を招き、鎌田校長が対談する。「ミッションスクールである本校の良さをアピールしたい」(大原正義教頭)。生徒を集めるためには「ライバル」の力も借りる。
 私学が運動や学業に優れた生徒を取り込む特待生制度を充実させるのは、スポーツの全国大会や進学実績で学校をPRしたいからだ。
 教育関連会社の調査によると、京都府内の私立高のうち、07年入試で特待生制度を「ある」と答えたのは約4割の16校、「ない」は3校だった。
 ただ、府内の私立高41校の台所事情は楽ではない。企業会計の損益計算書にあたる消費収支計算書をみると、「赤字」を示す消費収支超過は06年度、31校に上る。
 少子化で激化する生徒争奪戦のなか、授業料収入を得られない特待生制度は人数が多いほど経営を圧迫する。年間約10人を受け入れる私学の入試担当者は「赤字はやむを得ない。それでも優秀な生徒の確保には代えられない」と漏らす。
 鎌田校長は「魅力を伝えるには、とにかく学校に来てもらわないと」。捨て身の戦略に命運を懸ける。
<特待生制度> 学業、スポーツの各優秀者に適応される。入試成績上位者や、部活動の実績などで選ばれ、成績に応じて入学金免除から授業料の半額免除、全額免除などが決まる。年間授業料に相当する60万円の奨学金を支給する私立高もある。