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減る求人 高3就活に異変

「使い捨て」大量採用も
就職ガイダンスで自己PRの書き方などを学ぶ生徒たち。危機感の表れか、府内4会場の参加者合計は昨年の3倍だ(宮津市・みやづ歴史の館)

「今年の求人倍率は1倍未満もありうる。皆さんの中に、就職できない人が出るということだ」

 講師の言葉に、約80人の高校生は静まり返った。7月29日、就職を目指す中丹・丹後地域の3年生が集まった宮津市でのガイダンス。室内に緊張感が漂い、順番に自己PRや面接マナーの研修に取り組んだ。

 「先生には志望の会社を早く決めろと言われる。でも親は資格の取れる専門学校へ行け、と」。休憩中、男子生徒(18)=与謝野町=はつぶやいた。「今までもスーパーでバイトし、家にお金を入れていた。自分は高卒で働きたいんやけど」。厳しい不況と家計、先の長い人生。「もう少し考えたい」と窓の外を見つめた。

 夏休みは高校生の就職活動のピークだ。9月から始まる入社選考に向け、教員の指導で求人票を調べ、関心のある会社を見学して1社に絞り込む。

 「自動車、機械金属、半導体。世界不況で高卒就職の最有力産業が軒並みダウンした」と府北部の高校就職支援教員、荒田淳一さん(60)は話す。

 京都労働局によると、7月末時点の府内全域の高卒求人倍率は、昨年の1・75倍から今年は0・9〜1・2倍にまで落ち込む見込みという。

 変化は求人の「質」にも及ぶ。高卒就職事情に詳しい京都女子大の筒井美紀准教授は、府内の住宅設備会社の求人票に目を疑った。「従業員190人の会社が、180人の営業職を募集する内容。大量採用して親類・友人から契約を取れるだけ取らせ、1〜2年で使い捨てるんでしょう」

 学校側はこうした企業をブラックリスト化し、警戒を強めている。一方で、問題のない企業に就職しながら3年以内に辞める高卒者は全体の約半数にのぼる。その後に派遣などの非正規労働者になる例も少なくない。

 筒井准教授は「若者を使い捨てにせず、着実に技能・経験を積み上げられるシステムを社会全体で整えるべきだ」と警鐘を鳴らす。

 今年3月、京都八幡高(八幡市)を卒業する生徒たちに、学校から小冊子が配られた。解雇、失業で困った時の「安心ガイド」。ハローワークや社会保険事務所の一覧に加え、生活保護の申請相談などに応じる民間団体の連絡先も掲載した。

 冊子を作った森本義則教諭(43)は「内定取り消しや雇い止めが珍しくない世の中。卒業式前日の最後の授業で教えておきたかった」。来年の卒業生にも配るつもりだ。

【2009年8月4日掲載】