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虐待増加 貧困の影

親は疲弊、見えない明日
虐待などさまざまな事情で親元を離れ、児童養護施設で暮らす子どもたち。貧困の広がりは、こうした子どもを一層、増やす可能性がある(京都市内)

京都府内の児童相談所に、一本の通報が入った。「小学生の女の子が夜間、屋外に放置されている」。児童虐待の情報提供。ネグレクト(養育放棄)を疑った職員が訪ねると、父母は離婚し、20代の母親は飲食店とコンビニのパートで昼夜働いて疲れ切って育児のできる状態ではなかった。母子は今春、福祉施設に保護された 。

 「もし何らかの家計の支援があれば防げたのでは…。数々の虐待や不登校の例に接して、そう思うことは少なくない」と、この母子にかかわった児童福祉司(59)は話す 。

 児童福祉司がさらに語る。同じように母親の働き過ぎでネグレクトとして通報され、児童養護施設で保護された姉弟の例だ。50代の母親は施設から早く子どもを引き取ろうと、昼夜のダブルワークから派遣社員の仕事に移ったが、会社が倒産。生活保護を受給せざるを得なくなった 。

 子どもたちはこの夏休みに一時帰宅するのを楽しみにしていた。しかし帰れば実家の生活費がかさむ。福祉事務所に生活保護費の増額を求めたが断られ、再度交渉中という 。

 離婚、失業、健康不安は、どの親にも起こりうる。それは貧困に直結し、家族との生活や、さまざまな「体験」「学び」といった子どもの機会を奪う 。

 全国の児童相談所が昨年度に対応した虐待相談件数は4万2662件(速報値)。この10年で約6倍になった。増加の一因として格差社会の広がりを指摘する声もある 。

 困窮世帯の相談に応じている「全京都生活と健康を守る会連合会」の高橋瞬作事務局長(62)は「親の貧困に手を打たなければ、被害者になる子どもがさらに増え、深刻化しかねない」と警鐘を鳴らす。最近ようやく、高校授業料無償化や奨学金拡充などが議論され始めたが「社会保障の充実や雇用の安定など、子どもだけでなく家庭全体を支える仕組みが必要」と話す 。

 しかし現実は厳しい。京都府中部に住む30代の母親は4人の子どもと暮らす。役所に「子どもを施設に預けた方がいい」と言われ、それを拒むなどした結果、自活できるとみなされて生活保護を受給できなくなった 。

 パートの時給は府内最低水準。高校1年の長男もアルバイトを始めた。「幼い子のいる母親なんか、ほかに雇ってくれへん」と長男は言う。そして「世の中、そんなもんや 」。

 頑張っても、先の見えない社会。希望を失いそうな子どもたちに、大人がどう応えるのか、問われている。(おわり)

【2009年8月6日掲載】