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(1)時間と手間のロス省く

優しい母でいたいから、ゆとり大切に
■冷蔵庫3台活用/作業に締め切り設定
 滋賀県内の銀行に勤めるA子さん(42)は今春、勤続二十年目を迎えた。子どもは長男(10)と二男(8)、長女(6)の三人。朝は午前五時に起き、子どもと夫(50)を送り出す準備をしながら出勤の支度をする。月に四、五回、当番で午後七時まで会社に残らないといけない日は、その日の夕食を仕上げておく。帰宅後に慌てないための知恵だ。
 A子さんの両立のコツは「時間と手間のロスを省く」に尽きる。以前は車で行っていた保育園への送り迎えは自転車に変えた。車だと信号待ちや渋滞のため、時間が読みづらいからだ。買い物に毎日出かけるのも「時間の無駄」。食料品は週末にまとめ買いし、三台の冷蔵庫に収納する。
 会社でも、とにかく効率重視。主な業務はカードの発行だが、職場の同僚のように一件ずつ書類を他部署に届けたり、一枚ずつ押印するような働き方はしない。一つ一つの作業に自分で締め切り時間を設け、きっちりと守る。書類を運ぶ時間を節約するため、席を立つ回数を極力少なくし、押印はすべて目を通した上でまとめて片づける。本店・支店のコード番号はいちいち調べなくて済むよう、すべて暗記している。
 どれも五分、十分ずつ程度の時間短縮アイデアに見えるが「一週間、一カ月で見たらものすごい時間になる」。実際、職場では「仕事の速い人」と一目置かれ、当番で決まった日以外、残業で居残ることはない。
 あらゆる作業工程に制限時間を作るのは、その方が仕事に集中でき、短時間で仕上がるから。終業時間よりできるだけ早く仕事を終え、気持ちにゆとりを持って帰宅したいのだという。「余裕がないと、ちょっとしたことでつい子どもをしかってしまう。時間のロスを省くのは、自分の気持ちを安定させて子どもに向き合うためでもある」
 時間通りに仕事を完ぺきにこなすことで定評のあるA子さん。就職当初の「いつかは支店長に」という夢は、同期入社の男性や独身の後輩女性に次々と追い抜かれてついえた。時々ふとやるせない気分になるが「子どもができたことで仕事だけの人生にならず、育児と仕事を同時に体験できた。忙しくても私にはこっちの方が幸せ」と話す。
 十年後、二十年後にどうなっていたいかをイメージし、それに合わせて仕事との付き合い方を考える。A子さんにとっては家庭を持ち、たくさんの子どもに囲まれて過ごすことが人生で重要なことだった。いま働く理由は「勉強も趣味も、子どもに好きなことをさせてやれるだけの経済力がいるから」。おおらかで優しい母親でいるためにも、時間や金銭面での余裕が必要だと考える。「家事と仕事を頑張っている姿を見せることは、子どもの教育にも役立つはず」と信じている。
【2007年11月9日掲載】
 「ワーク・ライフ・バランス」という言葉がある。「仕事と私生活の調和」を意味し、男女とも仕事と家庭生活をうまく両立できるよう促す動きが広がっているが、まだまだ家事や育児の担い手は女性。働く女性が増えた一方で、一向に減らない家事・育児とのバランスの取り方に悩む向きは少なくない。いま子どもを抱えて働く女性たちに、それぞれの「ワーク・ライフ・バランス」を尋ねた。