京都新聞TOP > 政治・社会アーカイブ > 働くママは今
インデックス

(3)信頼と自覚、尊重しあって

子育ては「夫との共同事業」
■キャリア中断せず/精神面でも支え
 京都市内の医療機関で施設長を務める医師B子さん(52)は、子育てを「夫との共同事業」だと言い切る。
 夫(45)の両親は北陸在住と遠く、自身の母親は二十年以上前に他界。肉親のサポートがほとんど得られない中、夫と家事・育児を分担し、キャリアを中断することなくフルタイム勤務を続けてきた。施設長に昇進したのは四十代前半。育児中の女性としては、勤務先の医療法人で初のケースだった。
 子どもは長男(16)、二男(14)、長女(11)の三人。最初の子が生まれるとき、夫と話し合って仕事と家事・育児を両立しやすい態勢づくりに取り組んだ。
 まず自宅を全面改築。子どもが「お漏らし」してもすぐ掃除できるよう、床はすべて板張りにした。汚れ物が増えても洗濯が苦にならないよう、浴室を出たところに洗濯機と室内干しのスペースを確保した。
 冷蔵庫は三台に増やして数週間分の食料品をまとめて購入、保管できるようにした。忙しい日はシチューなど煮込み料理を大量に作って鍋ごと冷蔵庫に入れておけば、夕食時に慌てなくて済む。
 夫も積極的に家事・育児を受け持ってくれた。毎朝の洗濯や浴室の掃除、保育園の迎え…。深夜、子どものトイレに付き合ったり、長男と長女がぜんそくの発作を起こした時も寝床から出て対応してくれた。「子育ては二人の共同事業。一緒に頑張ろう」。長男が生まれる前、かけてくれた言葉を守ってくれた。
 精神面での支えも大きかった。長男を出産後、午後九時までの夜間診療と宿直のローテーションから外れ、昼間の定時勤務になった。が、定時に診察を終えられることなどない。保育園への迎えはいつも閉園ぎりぎり。帰宅後は家事が山積し、ゆっくり授乳する時間もない。車の中で授乳したこともある。
 夜も、ひっきりなしに起こされる。授乳やぜんそくの発作に加え「のどが渇いた」「トイレに行きたい」とほぼ三時間おき。慢性的な睡眠不足と疲れでパニックになり、一時は非常勤への転属や退職も考えた。
 もともとB子さんが医師を志したのは、仕事への責任、評価、給与水準などあらゆる面で男性と対等だと感じたから。患者や病院が自分に寄せる期待には百パーセント応えたかったし、そのためには働き方をセーブしたり、職場を去るのはいやだった。なのに妊娠後は「母体の健康保護」のために勤務シフトは緩やかになり、自分の身体も変わっていく。夫は、仕事も暮らしも何一つ変わらないというのに…。
 思う通り働けず、時間のゆとりがないことへの不満・不安をついぶつけてしまっても、夫は聞き流さずきちんと受け止めてくれた。「僕が非常勤に替わろうか」と言ってくれたこともある。
 「毎日、この人と結婚して良かったなって思う」とB子さん。もし家事・育児のすべてを任せきりにされていたら、とっくに生活は破たんしていただろう。いくら国や企業、親族のサポートがあっても、実際に子育てのタッグを組むのは夫だ。
 「いざという時に心底、信頼できる存在じゃないと。働く女性が子どもを育てるには、お互いに家庭の担い手としての自覚を持ち、相手を尊重しあえるパートナーを選ぶことも重要です」と力を込めた。
【2007年11月30日掲載】

まだまだ男性は「仕事優先」

 仕事が忙しくて家事・育児は妻に任せきり。子育てに参加したい気持ちはあるが―。国がまとめたデータには、男性側にも仕事と家事・育児のバランスに悩む人が増えている実態が表れている。
 内閣府が昨年、全国の既婚有業男性約2000人を対象に実施した意識調査では、生活での理想的な優先度で「仕事・家事・プライベートな時間を両立させたい」と答えた人が32.0%と最も多く、「仕事優先」はわずか2.3%だった。これに対して現実はどうか、という質問には「両立」は7.8%に激減。51.2%が「仕事優先」と回答し、最多を占めた。
 実際、30―40代の男性には長時間労働の人が多く、総務省「労働力調査」05年版によると、30代で約23%、40代で約21%が週60時間以上働いていた。年代別に1週間あたりの平均就業時間をみると、男性は25歳から急増し、35―39歳で週50.3時間とピークに。一方、この年代の女性は週34.3時間となっている。
 この結果について内閣府は「夫の育児時間が短くなっている背景に、育児期の男性の長時間労働がある」と指摘。「女性が就業時間を調整して子育てを行っているのが現状」と分析している。