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(4)「シングル」の壁…でも前へ

自分らしく生きる姿 わかってくれる
山本さんの一日のスケジュール
■ひとり親支える制度に不備
 京都市上京区の社会教育団体に勤める山本知恵さん(35)は、長女(6)が二歳の時、事実婚を解消した。長く大阪市内で働いていたが、長女が小学校に入学した今春、京都府内の実家近くに転居、それと前後して今の職場に転職した。
 週一回は午後九時半までの勤務がある。ほかに、大学院の博士課程に在籍し週二、三回、国際協力に関する授業を受け、大阪市内の大学で非常勤講師を務める日もある。
 帰宅はたいてい深夜。子どもは寝てしまっている。平日、話をするのは出勤前の一時間だけ。寂しい思いをさせているかと思うし、子どもの友だちの母親から批判されたこともある。でも、今の暮らし方を変えるつもりはない。
 働き方を変え、勉強を止め、子どもとの時間を増やすことは簡単だ。だが、そうしたからといって子どもと良い関係が築けるだろうか。自分の生き方を変えさせた、と恨みにも似た気持ちを抱いてしまわないか。
 世間には、画一的な「あるべき母親像」と、それに基づいた役割の押しつけがあるのを感じる。「母親らしさを演じきるより、一人の人間としてどう生きるか、自分らしい生き方を探す姿を見せる方が、娘の将来にはきっと役立つ。人生の先輩としてのかかわり方があってもいいのでは」
 共働き家庭や母子・父子家庭が増える一方、専業主婦が家事・育児を取り仕切ることを前提につくられた制度は多い。一人で子を育てるシングルマザーには、仕事との両立や制度の不備に加え、世間の冷ややかな目に悩む人も少なくない。

つらい世間の偏見

C子さんの一日のスケジュール
 北区の看護師C子さん(49)もその一人。長女(10)を妊娠中に婚約者と別れ、一人で子育てしてきた。管理職なので深夜勤務のシフトには入らなくて良いが、定時勤務の後にはカルテ処理などの残業がある。帰宅は早くて午後七時、遅くて午後九時。一人で家で待つ長女が心配で、ベビーシッターを雇ったり、塾に行かせることも考えたが、感受性が強く人見知りしがちな長女の「一人で家にいたい」という気持ちを尊重した。
 家にいる時間が少ないので、一緒にいられる時はべったりくっついて過ごす。少しでも子どもに向き合う時間をつくるため、家事は休日にまとめて片付ける。パンを焼いたり、煮物を大量に作ったりして冷凍庫に保存する。掃除も休日に回し、平日の夜はとことん子どもに付き合う。宿題を見たり、ゲームをしたり。
 それでも、やはり寂しいのだろう。長女に最近、不登校の気配が出てきた。食が細くて体重も増えず、同学年の子と比べて小柄だ。「一人にさせる時間が多過ぎるのでは。食事の管理はできていますか」−。担任教諭の言葉に、母子家庭への偏見を感じた。通学時の交通指導や学校の清掃活動に参加できていないことも、やんわりと批判された。
 PTA活動に参加したい気持ちはある。学校での娘の状態も知りたい。母親間のつながりも大事だと思う。だが保護者向けの会議や行事が開かれるのはたいてい平日だ。
 「母子家庭だから」という目で見られるのが嫌で、子どもには礼儀作法を徹底して教えた。着る物も食べ物も質の良いものを選んだ。「一人でも生きられる強い人に」と懸命に育ててきた。親子関係も良好だ。娘とは何でも隠さずに話し、信頼関係ができていると自負する。「だけど、よそから見たら、だらしない家庭なのかもしれない」。
 世間が求める母親としての役割をうまく果たせない時、自分の中にも「あるべき母親像」があると感じる。だが、それにとらわれてしまうと、前に進めない。「割り切らないと、やっていけないことが多い。いろんな家庭があるのだ、という理解がもう少し広がれば、と思うことはある」
【2007年12月7日掲載】

母子家庭の7割、年収200万円未満

 「ひとり親家庭」が全国的に急増している。国勢調査を追うと、1995年の62万世帯から、2000年には71万世帯、05年には84万世帯に跳ね上がった。京都府内でも、95年の1万2000世帯から05年は1万8000世帯に増加。母子と父子の比率は、圧倒的に母子家庭の割合が高く、府の05年度「府母子・父子世帯実態調査」では「母子家庭となった事由」の8割以上が「離婚」だった。
 また同調査の「母子世帯の就労状況」では、就労者の45%がパート勤務やアルバイト。就労による年間収入額は、7割以上が200万円以下と回答した。子を抱えて働く場合、保育所や学校行事との兼ね合いから低収入の勤務を選ばざるをえない事情があるとみて、府生活福祉室は「子どもの手が離れてから正社員となれるよう、パソコン技能など職業能力を高める支援を進める必要がある」としている。