京都新聞TOP > 政治・社会アーカイブ > 働くママは今
インデックス

(5・完)「正社員で再就職」道険しく

社会から自分の存在認められたい
■まず育児専念
 「もう正社員として働くことはできないのかもしれない」−。大津市の主婦D子さん(33)は時々、ぼんやりとした不安に取りつかれる。
 短大卒業後、長く宝飾品ブランドの販売員として働き、結婚退職した。長女(5)が二歳の時、再就職を思い立ち、ハローワークを訪ねたが、希望するサービス業では正社員として働けそうな会社が見つからなかった。
 ネックとなったのが勤務時間。接客や販売などサービス系企業の多くが、勤務条件に午後六時以降の勤務や休日出勤を挙げていた。
 保育園の延長保育を利用し、休日は夫(36)に見ていてもらえば、子どもの安全は確保できる。だが、自分が働きたいからといって子どもを預けるのは、母親としての責任の放棄につながるような気がした。「本格的に働くのは、子どもがもう少し大きくなるまで待とう」。保育園の送迎時間に影響しない時間帯でパートの職を探し、いくつかの職場を経験した。
 そんな中、二女(1)を妊娠。正社員としての再スタートはまたも遠のき、今は市内の保育園で保育補助のパート勤めをしている。
 正社員にこだわるのは、自分が社会を構成する一員であるという実感が持てるから。パートより仕事の責任が重いが、社会保障もしっかりしており、社会から存在を認められているように感じる。「二女が小学生になったら再度、正社員を目指して就職活動したい」。
 だが、そのころは四十歳近く。今度は年齢というハードルが立ちふさがってくる。「結局、仕事と育児のどちらかをあきらめないといけないのが女性の人生なのかな」
 子どもに手がかからなくなるころを見計らって職探しを始める女性は多いが、パート勤務に就く人が大多数。正社員となるには、育児問題に加え、業務スキルの向上などクリアしておかなければならない課題は多い。

スキル磨き即戦力に

E子さんのある日のスケジュール
 四年前、大津市のサービス系企業に正社員として再就職したE子さん(42)は「ほぼ七年かけて準備をした」と話す。
 高校卒業後、働いていた会社を結婚退職したが、もともとは一生働くつもりでいた。手に職のないままパート勤めをしていた母親は、正社員の父親と同じだけ働いても薄給だった。「働くなら、自分で生計を立てられるだけの収入を得られる正社員じゃないと」。男性と対等に仕事に参画し、自分の能力が社会に反映されていることが確かめられる点も重要だった。
 結婚してすぐ長女(13)が生まれ、三年後には長男(10)を授かった。しばらくは育児に専念し、長男が小学校に上がる時をめどに再就職できるよう準備を始めた。
 高校で学んだ情報処理技術と、企業で身につけた経理事務が武器だ。まずパソコン操作の勘を取り戻そうと機材を買い、パンフレットの下原稿を打つ在宅アルバイトを始めた。外に出て働く感覚に慣れるため、スーパーの開店準備作業のアルバイトも数年間続けた。
 そして長男の小学校入学を控えた一月、ハローワークに登録。予想はしていたが「正社員で三十五歳以上」の求人はごくわずか。長男が学童保育から帰る午後六時までに帰宅できる職場を探すと、条件の合う企業はさらに減り、三社になった。  面接では、どの会社でも「勤務中に子どもに緊急事態が起きたらどうするか」といった子どものサポート体制とパソコン技術がセットで問われた。「すぐ使える人材であるよう、再就職したいときまでにスキルを磨き、勤めに出やすい家庭環境を整えておくことが大切」と話す。
 再就職にあたって求人広告を見た時、基本給の安さなど待遇の悪さにがくぜんとした。それでも「家庭以外に自分の能力や存在が認められる場所ができ、充実感がある。条件を求め過ぎなければ、きっと就職先は見つかる。働きたい気持ちを大事に、努力を続けてほしい」と“後輩”にエールを送る。
【2007年12月14日掲載=おわり】

7割以上がパート採用

 子育て中の人が新たに職に就こうとする場合、多くがパート勤務やアルバイトを選ぶ結果になっている。20歳未満の子を育てる人の就職を支援する「マザーズハローワーク烏丸御池」によると、今年4―10月までに同所で就職先の紹介を受けた約1480人のうち、就職が決まったのは約470人。このうち正社員として採用されたのは約110人だった。4分の3がパート・アルバイトの計算だ。小幡靖・統括職業指導官は「小さい子がいる場合、保育園の送迎や学校行事などで、企業が求める労働時間との折り合いがつかないことが多い。結果的に、時間の融通をつけやすいパートやアルバイトを選ぶことになるようだ」。
就職できた人の6割が事務系職種で採用されている。「就職には基本的なパソコン技術が必須。最低でもワードやエクセルでのデータ入力ができなければ、企業にアピールできない」と指摘する。京都府内では、女性の再就職支援を目的にしたパソコン講座がウィングス京都(京都市中京区)や京都ジョブパーク(南区)などで開かれており、利用を考えてもいいだろう。
 この連載への感想、意見などを、京都新聞文化報道部生活担当へお寄せください。ファクス075(241)3959、メールhome@mb.kyoto−np.co.jp