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長明方丈石の石碑

庵跡 苔に年月感じ
鴨長明の庵跡を今に伝える方丈石の石碑(京都市伏見区)
 人が住んでいたとはにわかには信じがたい。石がむき出しの傾斜のある地面、周囲は小さな谷川に水が流れているものの、木々に囲まれて薄暗い。「ゆく河の流れは絶えずして…」。中世の代表的な随筆「方丈記」を著した鴨長明の一丈(三メートル)四方の庵があった場所、と伝える石碑だ。
 京都市伏見区の市日野野外活動施設の近くにある林道を行くとたどり着く。進むにつれて道の両わきにシダが茂り、だんだん坂道がきつくなる。歩き始めて約五分、息が弾み始めたころに目の前に巨大な岩が現れた。その上面に石碑はある。
 石碑には「明和壬辰夏五」(一七七二年五月)とあり、裏面に儒者の平安巌垣彦明が作った漢文が刻まれている。少し苔(こけ)むして年月を感じる。地元の資料によると、一九六八(昭和四十三)年に何者かに持ち去られ、翌年に見つかったという。
 知り合いと二人で訪れた東京都文京区の建築設計事務所経営の小出正子さん(五八)は、「シンプルな建物は日本建築の一つの流れとしてあるのでは」と、長明の生きた時代から今に思いをはせた。