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志賀直哉旧居跡の石碑

田園の記憶伝え
志賀直哉が一時期暮らした場所は、静かな時間が流れる(京都市山科区竹鼻)
車や人が行き交い混雑する京都市山科区の外環三条の交差点から南に百メートルほど歩き、細い道を東に入る。閑静な住宅地を進み、四ノ宮川を立原橋で渡ってすぐに、作家の志賀直哉が一九二三(大正十二)年十月から約一年半暮らした家の跡を示す石碑がたたずむ。
 京都洛東ライオンズクラブが八九年に建立した。石碑に刻まれた文は、「細い土橋、硝子(がらす)戸、池庭のある一軒家で、…美しい山科の自然に囲まれた住まいであった」と様子を描く。ここでの体験をもとに書かれた「山科の記憶」の一節には、「山科川の小さい流れについて来ると、月は高く、寒い風が刈田を渡って吹いた」とある。
 のどかな田園風景が広がっていたころの山科を頭に浮かべていると、近所の女性(七三)が声をかけてきた。「琵琶湖疏水沿いの桜もいいけど、ここのも見事ですよ」。石碑が立つ川沿いに並ぶ桜の木々は、今は落ち葉を積もらせる。
 石碑のそばにはお地蔵さんもあり、一帯は、近くに住む住民が交代で朝に掃除しているという。