京都新聞TOP > 特集アーカイブ >
インデックス

宴松原

松林一帯で供宴
石材店の軒先にある「宴松原」の石碑(京都市上京区出水通六軒町東入ル)
 寺院が軒を連ねる京都市上京区出水通六軒町東入ル。石材店の軒先に、こじんまりと立つ石碑がある。石材店社長の芳村敦さん(三六)に石碑の由来を尋ねると、「亡くなった父親か祖父が立てたようです。詳しい経緯や刻まれた文字の意味は聞かずじまいでした…」と話してくれた。
 市教委によると、このあたりは平安時代、平安京の内裏の西側で、松林が広がっていたとされる。「栄花物語」に、一帯で供宴が催されていたという記述があり、「宴松原」という言葉も見られるという。一説には、天皇の代替わりに合わせた内裏の代替地だったともいわれる。
 しかし、平安時代中ごろから一帯は廃れ始める。鬼が出没するという寂しい場所で、「大鏡」によると、女性の遺体があったという。藤原道隆が肝試しをして、正体の分からない声を聞き、逃げ帰ったという話も伝わる。
 今は近所の人たちが道ばたで世間話に花を咲かせるのどかな町だが、石碑は平安時代の不思議な町の様子を静かに伝えている。

【2007年6月19日掲載】