京都新聞TOP > 特集アーカイブ >
インデックス

亀の水不動尊

木食正禅 庵の名残
静かに水の流れる亀の水不動尊。毎年5月と11月には信者が集まり護摩がたかれる(京都市山科区)
 車の行き交う三条通を眼下に、ひっそりとした空気が昔日をしのばせる日ノ岡峠の旧東海道。山科側に峠を下って行くと、坂の途中に高さ三メートルほどの石組みの壁が姿を見せる。壁の中腹にある小さな洞穴の奥には不動尊像。入り口には石のカメが顔をのぞかせ、静寂の中でカメの口からわき水がとうとうと流れ出る。
 亀の水不動尊は、一七三八(元文三)年、日ノ岡峠の改修に尽力した僧木食(もくじき)正禅が結んだ庵(いおり)の名残だ。峠の途中に構えた庵は休息所を兼ね、井戸水で牛馬の渇きをいやし、湯茶で旅人を接待したとされる。
 「子どものころはうっそうとした山が迫っていて、わき水にも勢いがありました」。四十年以上、朝夕に不動尊の世話を続ける亀の水不動会代表の岩田良三さん(77)=京都市山科区上野=は昔の様子を語る。
 一時は完全にわき水が止まり、水道水を流していた時期もある。しかしここ数年で、少しずつわき水が戻り、今は水道水の「助けを借りて」流れを守る。「いつかは、わき水だけの流れが戻る日が来ると思います」と、岩田さんは話した。

【2008年3月18日掲載】