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(39)縁結びの幸神社(京都市上京区)

御利益は永遠の愛
縁結びを願い、社殿に取り付けられた絵馬(京都市上京区・幸神社)
 学生時代を懐かしみながら、家々が立ち並ぶ道を女子大生に交じって歩いていると、幸神社が現れた。「さいのかみのやしろ」と読む。ここで愛を誓った男女の縁は永遠に結ばれると、古くから伝えられている境内は、派手派手しさがなく、ひっそりしている。ただ小春日和の柔らかな光が社殿に降り注いでいた。
 神話の時代にさかのぼる。天照大神(あまてらすおおみかみ)の孫・瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)が複数の神々を連れて、天から日向の高千穂へ向かっていた。分かれ道にさしかかると、一行を待ち伏せる異形の神に出会った。背が高く、赤く輝く目を持ち、異様に長い鼻の男だった。
 同行した一人の女神が男の前に出た。天岩屋戸に隠れた天照大神を、伏せたおけの上で踊ることで引き出すことに成功した天鈿女命(あめのうずめのみこと)だった。男と問答を繰り返すと、名前を猿田彦大神(さるたひこのおおかみ)といい、一行を道案内をするために参上していたことが分かる。無事に道案内の役目を果たした後、二人の神は結ばれた−。
 幸神社は猿田彦大神と天鈿女命をまつる。周辺地域は、平安京以前は出雲氏一族が本拠地としていたことから、主祭神の猿田彦大神は出雲路の道祖神でもあった。都ができると、平安京の鬼門の東北の神を担った。「天と地を導き結んだとする二人の神にあやかり、縁結びとなったんでしょう」と総代の福井明さん(八一)=上京区=は話す。
 同神社には男と女の思いをめぐる、もう一つの話がある。境内の東北の隅に大小の石が重ねて置かれた石の神。道を守り、都の邪気を払うとして敬われてきた。この石神が、おそらく狂言「石神」に登場する石神ではないかと考えられている。
 この狂言は夫と別れるのを石神に決めてもらうため、石を持ち上げられるかどうかをつづるものだ。境内では石神は安置され、触ったり持ち上げたりすることはできないが、福井さんは「狂言を知って見に来られる人もいます」とほほ笑む。
 社殿には「恋人になれますように」「結婚できますように」と書き込まれた多くの絵馬が飾られている。春を待ちわびる参拝者の気持ちに応えるように、境内に植えられた梅の花が早くもつぼみをほころばせていた。
【メモ】幸神社は京阪出町柳駅から徒歩6分、地下鉄今出川駅から約10分。絵馬に描かれているのは、主祭神の猿田彦大神。毎年9月に秋の大祭が営まれる。

【2007年2月8日掲載】

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