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(61)菊野大明神(京都市中京区)

良縁結び悪縁断つ
縁切りをかなえる神様に手を合わせる伊藤住職(京都市中京区)
 「どうしても別れたいのに、恋人が別れてくれない」「何とかして夫の浮気をやめさせたい」。河原町二条の交差点を少し北に行った東側にある法雲寺のお堂内に、そんな縁切りの願いをかなえてくれるという「菊野大明神」の祠(ほこら)がひっそりとたたずむ。
 寺伝などによると、昔、三条東洞院に、婚礼の儀で近くを通ると、その後に必ず夫婦が別れてしまう石があった。法雲寺が天明八(一七八八)年の大火で全焼し、十五年後に再建する際、山伏が現れて「霊石があるのを知っているか。祭らなあかんぞ」と言った。当時の住職が霊石を探したところ、この「縁切り石」が出てきたという。
 別の伝承では、小野小町に恋焦がれて百夜通いをしていた深草少将が、腰掛けて休んだ石とされている。少将はあと一夜を残して亡くなり、その石に無念の思いがこもって、男女を別れさせるというのだ。
 以前はうす暗いお堂の中の祠に、恨みのこもった願書が重なるように張られたり、ぐるぐるに巻いた女性の髪や五寸くぎを刺したわら人形が置かれるなど、不気味な雰囲気だった。しかし、一九八八年に改装し、今は良縁を結び、悪縁だけを断ち切る神様として信仰されている。もっとも、伊藤真浄住職(五〇)によると「現実に訪れるのは悪縁を切りたい人ばかり。しかも、参拝者の九割は女性」という。
 最も多いのは、夫や恋人が浮気相手と別れてほしい、という願い。ほかに▽子どもの縁談が気に入らないから壊れてほしい▽ストーカーから逃れたい−などもある。
 伊藤住職に「男の本性を教えて」などと悩みを打ち明ける女性もいる。住職は「男と女は心の根っこが違う」といい、状況をじっくりと聞いて助言している。「現実は小説よりもドラマチックです。ドロドロしてますが…」と苦笑する。
 菊野大明神を参ったり、住職の助言を聞いて帰り、何カ月か後に「別れられました」とすっきりした顔で報告に来る人も多い。伊藤住職は「いつの世も、一番の喜びも、一番の苦しみも恋愛によってもたらされます。それにしても、男女の仲は難しい」としみじみと語る。
【メモ】菊野大明神のある法雲寺は、京都市中京区河原町通二条上ル清水町364ノ1。地下鉄・京都市役所前駅から徒歩5分。口コミでは、祠の周りをぐるぐる回りながら祈ると、願いがかなうといわれている。問い合わせは法雲寺TEL075(241)2331。

【2007年3月21日掲載】

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