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(68)福勝寺(京都市上京区)

ひょうたんに願い
節分の日に限り、授与されるお守り。ひとつずつ加持祈祷されている(京都市上京区・福勝寺)
 千本通から出水通を西に入ると、右手にどっしりとした福勝寺の山門が現れる。もともと九条家の屋敷の門だったといい、原則として、節分の日にしか開門されない。
 お寺は江戸時代、寺町通丸太町下ルにあったといわれる。宝永の大火(一七〇八年)の後、現在の場所に移設されることになった。当時、天皇の勅願寺として発展していた。今は「ひょうたん寺」の通称で親しまれている。
 「名前のいわれはお寺に伝わるひょうたんのお守りです」と住職の亀谷和雄さん(七六)。正式な名前は「宝珠尊融通御守(ほうしゅそんゆうづうおんまもり)」。弘法大師が中国で学んだ、貧苦の衆生を救済する秘法「如意宝珠の修法」に由来する。「如意宝珠」とは何でも思い通りになるという不思議な玉。これをふたつ重ねた姿に似ているひょうたんが鎌倉時代ごろから用いられるようになったという。
 節分の日にしか授与されないお守りは口コミで評判になっていった。八年ほど前までは、熱心な参拝者が前日から列をなして開門を待っていたほどだ。混雑を避けるため、現在は予約制をとっている。それでも節分の当日、境内は約三千人の参拝者でにぎわいをみせる。副住職の亀谷英央さん(四五)が「『昔はよう並んで、苦労してお守りを手に入れていたもんや』と当時を懐かしむ声が多いんです」と教えてくれた。
 ひょうたんにまつわる別の故事もある。戦国時代に豊臣秀吉がお寺に信仰を寄せていた。秀吉は出陣のたびに武運長久を願って奉納したひょうたんで「千成ひょうたん」の旗印を作ったという。
 とはいえ、ひょうたんのお守りは壊れやすく、気軽に持ち歩くわけにいかない。そこで携帯用として扇子のお守りも授与している。「開いてしまうと御利益はない」という注意書きが添えられている。
 すでに来年分の予約の手紙が続々とお寺に届いている。京都だけでなく、北海道や九州からも依頼があるという。「来年のことをいえば鬼が笑う」というが、節分の日のことだけに笑えないかもしれない。
【メモ】福勝寺TEL075(841)5818。京都市上京区出水通千本西入ル。本尊は薬師如来。市バス「千本出水」で下車し、西へ約100メートル。「融通さん」の愛称で知られる歓喜天の例日の1、16日には毎月、通用門が開かれ、自由参拝できる。

【2007年4月4日掲載】

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