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(89)山王神社の夫婦岩(京都市右京区)

子宝願う人絶えず
本堂の前で寄り添うように並ぶ夫婦岩(京都市右京区・山王神社)
 子どもの誕生を望む夫婦の願いを、長年受け止め続けてきた岩が、山王神社にある。本堂前に寄り添うように並んでいる、しめ縄で飾られた二つの岩。名前を「夫婦(めおと)岩」という。
 神社には、二つの岩の由来が何とも不思議な話で伝わっている。約千年前、天台座主の良真がこの地を訪れた際、良真の後を追って、比叡山から一緒に飛んできたというのだ。同神社がある山ノ内地域はかつて、比叡山延暦寺の領地だった。同神社は、延暦寺の守護神でもある日吉大社(大津市)から分霊し、創建されたとされる。山王神社の米川保清宮司(八〇)は「延暦寺と山王神社のつながりを示す話ではないか」と推測する。
 岩はいつしか夫婦岩と呼ばれ、子授けや安産の信仰を集めるようになった。「岩が男性と女性らしい形をしていたからでしょう」と米川宮司。向かって左の女岩は高さ約一メートル、幅約二・五メートルで、中央部分がへこんでいる。男岩は高さ約一・五メートル、幅約一・三メートルで、ややずんぐりした形だ。男岩と言うには少し物足りない気がするが、実はこの岩、地中深く埋まっている。約十五年前、本堂の改修に合わせて、離れていた岩を現在の場所に移すために掘り出した際、大きさが五メートルほどであることが分かったという。
 神社の言い伝えでは、二つの岩の周囲を、三周回った後、岩をなでて願うと子を授かるという。また、子どもが生まれて初めての宮参りで、酒や米、梅干しを小皿に入れて、女岩のくぼみに供えて感謝し、長生きなどを祈願する。梅干しの皮で鼻をつまんで出世を祈り、種をくぼみに入れて、子孫繁栄を願う言い伝えも残っている。
 今でも願を掛けるために夫婦や女性が訪れ、深夜に一人で祈る女性もいる。また、「跡継ぎができました」「二人目が生まれました」などの喜びの報告があったり、手紙が日本各地から届く。
 一方で現在は虐待など子どもをめぐる悲しい出来事が多い世の中。米川宮司は「子どもが欲しいと一心に願う親の姿を見ているだけに、やりきれない。『子が宝』という思いは、時代を超えて変わらないはずなのに」と二つの岩を見つめた。
【メモ】山王神社は、京福電鉄・山ノ内駅から北へ徒歩約5分でTEL075(821)0934。樹齢700年といわれるクスノキが境内を覆っている。境内には水琴窟(くつ)のほか、親鸞が座ったり、足跡が残ると伝わる岩もある。

【2007年5月15日掲載】

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