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(199)きゃらかんさん(京都市東山区)

最澄が香木を彫る
唐から渡来した香木で彫られたという観音像「きゃらかんさん」(京都市東山区・青龍寺)
 京都市東山区の霊山観音参道に続く道沿いに「きゃらかんさん」の通称名で知られる青龍寺がある。平安建都とともに歩んできたその歴史は、有名寺院の集まる東山地域の中でも最古級で、唐から渡来した霊木のご本尊が逸話を伝える。
 青龍寺の本尊は、伽羅観音(きゃらかんのん)菩薩像。寺伝によると、七八八年、唐の徳宗皇帝が観音さまの夢を見た。夢のお告げで、日本の桓武天皇に観音像を贈るようにと聞いた皇帝は、香木の伽羅を日本への使節に託した。受け取った天皇の命で、伝教大師最澄が香木から観音像を彫り上げたという。
 観音像は当初、皇室の内仏だったが、民衆にもお参りしてもらおうと、長岡京近郊の小塩山に大宝寺を創建して安置した。寺は平安京への遷都とともに現在地に移り、戦乱の中で名を変えながら天台宗から浄土宗となったが、像はずっと守られてきた。
 本堂にある観音菩薩像は、しなやかで優美な姿。傷みが激しく、香木とは言え、実際に芳香が漂うわけではないが、かぐわしい雰囲気だ。「『きゃらかんさん』の名は、地域の方がいつのころかに付けてくれたのでは」と話すのは篠原行雄住職(65)と妻のトシ子さん(62)。「法灯が続いてきた歴史に感謝し、最近は檀家の若い人たちにも寺の歴史をお話しするようにしています」という。洛陽三十三カ所観音巡礼の札所の一つで「熱心にお参りに来られる方もいて、観音さんへの信仰心の深さを教えられる」。
 嗅覚(きゅうかく)に訴えるような本尊に加え、聴覚を呼び覚ます念仏石、別名「カンカン石」も有名だ。空から落下したいん石と伝えられ、大小二つある。本堂前の石は縦一メートル、横九十センチ、厚さ三十五センチで重さ約一トン。堂内の石は縦三十センチ、横十五センチ、厚さ五センチ。一一九二年、後白河法皇の菩提(ぼだい)を弔うため、法然の弟子見仏が、法然を招いて念仏を上げた。これが、一日に六回、読経する浄土宗の六時礼賛念仏の始まりで、石は鐘の代わりに念仏の調子をとるために使われたという。
 石は諸願成就の御利益があるとして信仰を集める。軽く叩けば「キーン」と金属性の音。観音像のかぐわしさと相まって、五感で信仰を感じられそうだ。
【メモ】京都市東山区高台寺南門通東大路東入ル。青龍寺の名になったのは寛永年間(1624―44)。清水寺の寺侍で西郷隆盛や僧の月照らと親交があった勤王の志士、近藤正慎の墓がある。洛陽三十三カ所観音巡礼第九番。問い合わせはTEL075(561)7216。

【2008年1月8日掲載】

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