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(208)濡髪大明神(京都市東山区)

火災防ぐ白キツネ
知恩院を火災から守る白キツネをまつる濡髪大明神。良縁祈願に訪れる女性も多い(京都市東山区)
 真冬でも、観光客や参拝の市民の姿が絶えない知恩院。その境内の北東の隅、墓地に囲まれた場所にひっそりとたたずむ小さな社がある。社は、知恩院を火災から守る白キツネをまつっているという。
 夫と一緒に二十年ぶりに知恩院に来たという八木千恵子さん(47)=京都市山科区=は「こんな場所があるなんて知らなかった。防火の神さまにお参りできてよかった」と話した。
 江戸初期、知恩院の霊巖(れいがん)上人の枕元に濡(ぬ)れ姿ですすり泣く童子が現れた。童子は、昔から境内に住んでいた白キツネで、御影堂が建設されたためにすみかをなくしたという。あわれに思った霊巖上人は、童子のためにすみかをつくってやった。後日、再び枕元に現れた童子は、お礼に知恩院を火災から守ることを誓ったという。上人は、その童子を濡髪童子と名づけ、社にまつった。
 ほかにも、すみかを追われて恨みに思った白キツネが雨の日に髪を濡らした子どもの姿で霊巖上人の前に現れたが、説法を聞いて改心し、火災から寺を守ると約束して、その印に傘を置いていったとも伝わる。その傘が、知恩院の七不思議の一つ、御影堂の軒にある「忘れ傘」という。
 社では、毎年十一月二十五日に護摩焚(た)きの大祭があり、多い時には二百人ほどの人が参拝に訪れる。子どものころから、七十八年にわたってお参りしているという植村日出子さん(81)=中京区=は「以前は近くに住んでいたので、毎日お参りしていた。母親の代からお参りしているので、よく自分の顔を知ってくれているような気がするんです」と話す。
 防火の神だけでなく、良縁成就の神としても、地元の人たちに慕われている。「濡髪」という名が女性の美しさや男女の仲を連想させるせいか、社に飾られていた提灯には、舞妓や芸妓と思われる名前が書かれていた。
 知恩院御廟所の原口善弘課長は「必ずしも観光客が訪れるわけではないが、濡髪大明神は境内の中で表鬼門の場所にあり、知恩院全体を災厄から守っている。なくてはならない存在だと思っている」と話していた。
【メモ】知恩院は、京都市東山区林下町。京阪電鉄四条駅から徒歩約10分、地下鉄東西線東山駅から徒歩約5分。濡髪大明神は、三門から入って御影堂や方丈などを通り過ぎ、法然上人をまつる御廟所の近くにある。問い合わせは知恩院TEL075(531)2112。

【2008年1月24日掲載】

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