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(213)宇佐八幡宮の土鳩(大津市)

子どもの成長祈る
子どもの成長を願って市民が奉納した土鳩。「猿害防止幕」と書かれた紙とビニール製の幕が張られている。(大津市錦織町)
 赤と青が鮮やかな小さな土製の鳩(はと)が、横一列に並んでいた。大津市錦織町。小高い宇佐山の山頂付近に立つ、宇佐八幡宮には、子どもが無事に成長するよう祈り、親が鳩の人形を奉納する信仰が残っている。
 宇佐八幡宮は、平安時代中期に大津で隠居生活を送っていた武将の源頼義が建立した、と伝わる。子どもの守り神として信仰を集め、地域では「むし八幡」と呼ばれている。
 宇佐山の急な上り坂を約四百メートル上る。息を切らしながら宇佐八幡宮にたどり着くと、本殿の両脇に祭られた高さ三−五センチほどの小さな鳩の人形約八百五十体が目に入った。
 この鳩は、古くは神へのお礼の念を込めて奉納したと伝わるが、今では子どもの成長を祈願する存在に変わっている。胴体に子どもの名前や年齢、「祈 元気になりますように」という言葉が書かれた鳩もあり、わが子を思う親の愛情が伝わってくる。
 土鳩は人形店で購入する人が多いという。市外の人も訪れることがあり、年間十体近くが納められている。
 ほほ笑ましい信仰が残る宇佐八幡宮だが、十年以上も前から猿害にさらされている。
 近年問題となっているサルの大津E群が山から下りていたずらをし、土鳩を割る被害が出ているのだという。本殿の脇には、無残にも粉々に砕かれた鳩の残骸(ざんがい)が残されていた。
 大津市猿害対策室によると、錦織地区は大津E群の縄張りに当たる。家庭菜園の野菜を盗んだり、家屋の一部を壊す被害が相次いでいる。サルは人々の暮らしと、古くからの信仰の両方を侵している。
 今、宇佐八幡宮の土鳩の棚には「猿害防止」と書いた紙を張り、その上に透明のビニールシートをかぶせている。お世辞にも良い外見とは言えないが、サルから鳩を守るためには仕方がないのだろう。
 宇佐八幡宮がある錦織町自治会の米澤弘次会長(64)は「サルはけしからん。土鳩は昔から脈々と受け継いできた風習なので、しっかり守っていかなければいけない」と話している。
【メモ】宇佐八幡宮へは、JR湖西線の西大津駅か京阪石山坂本線の近江神宮前駅から徒歩で約10分。近くには近江神宮がある。宇佐山には、戦国時代に織田信長が建てた宇佐山城の城跡が残る。源頼義が八幡宮を建立する場所を探していた時、数羽のハトが宇佐山の山頂に案内した逸話が残り、ハトとの縁が深い。

【2008年2月5日掲載】

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