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(223)大黒さん(京都市上京区)

願い込め口に小石
願いを込めて、そっと小石をのせる参拝者(京都市上京区・北野天満宮)
 学問の神様を祭る北野天満宮は梅の季節に入り、多くの参拝者でにぎわっている。国宝の社殿をはじめ、境内には重要文化財も多いが、あまり知られていない隠れたスポットもある。石灯籠(どうろう)の台座に浮き彫りされている「大黒さん」もその一つ。天神さんの七不思議にも数えられる。
 高さ三十センチ、幅六十センチの大黒さんは、ずきんをかぶり、右手に小づち、左手に米俵を抱える。特徴は大きく開けた口。この中に、落ちないように小石を置くことができると、願い事がかなうという。
 卒業旅行で訪れた山梨県の高校生三人が順番に試みていたが、なかなかうまく納まらない。それもそのはず。直径二センチほどの小さな穴が左右に並んだ口の部分は、下に向かって傾いている。その上、度重なる挑戦のせいか、表面は磨かれたようにつるつるで滑りやい。「できた」と声を上げて手を離すと、とたんに落ちてしまった。灯籠の周りには、たくさんの小石が転がっていた。
 灯籠の正式な寄進記録はないという。手掛かりは「大黒組」「安政二歳(一八五五年) 十月吉日」と刻まれた記銘だけだ。権禰宜(ねぎ)の中野忠雄さんによると、その当時、河原町に大黒屋という質商があった。ある時、木彫りの大黒天像を手に入れて祭ったところ、商売が繁盛したという。この大黒屋を中心とした質商組合「大黒組」が商売繁盛を願って、寄進したとみられている。
 では、口に小石を入れるようになったのはどうしてだろう。中野さんは「誰が、どのようにして始めたのか分からない。当初はお金がたまる、商売が繁盛する、という願いが込められた民間信仰だった。成功した小石を財布に入れておくとお金がたまるという説もあるんです」と説明する。修学旅行の時期には、生徒が列をつくって試みる姿も見られるという。
 今は入試シーズンとあって、境内には受験生とみられる若者の姿が目立つ。なでたところが良くなると伝わる「神牛の像」の頭を触っている人は見掛けても、灯籠の前に足を運ぶ人はいない。「滑って、落ちてしまう」のは、やはり受験生にとっては縁起が悪いのだろう。
【メモ】北野天満宮は京都市上京区馬喰町、TEL075(461)0005。大黒さんの石灯籠は重要文化財「三光門」の東南に位置する。境内では、2月1日から梅苑の公開が始まり、25日には菅原道真公の命日にちなんで「梅花祭」が営まれる。

【2008年2月22日掲載】

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