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(227)プール地蔵(京都市左京区)

水難から児童守る
西日を受け、静かにたたずむ「プール地蔵」(京都市左京区)
 紅葉のライトアップで知られる京都市左京区の圓光寺に、頭部が欠けた地蔵がまつられている。立て札も説明書きもないが、上京区の元西陣小の卒業生には「プール地蔵」として知られている。花こう岩の表面は風化が進み、顔はわずかに鼻の隆起がわかる程度。しかし、地中から掘り出され、同小が休校するまでの約三十年、子どもの水難よけを願う親の祈りを一身に受けてきた。
 プール地蔵のエピソードは、一九九五年発行の「西陣小学校学譜」に詳しい。
 一九六六年、三年後に創立百周年を迎える西陣小で、記念事業のプール建設が始まった。校庭が手狭だった同小は、隣接する大宮児童公園の東側が用地にあてられた。翌年六月、工事現場から頭部が欠けた地蔵が掘り出される。当時の教頭が引受先を探したが見つからず、教頭が守り本尊としていた圓光寺に回向を頼んだらしい。六八年、プールは完成した。
 同年八月、真新しいプールで泳いでいた三年生児童が、水底にあった自動浄化装置の吸水口に頭部を吸い付けられる事故が起こった。プール地下の機械室にいた先生が浄化装置を操作し、児童は危うく一命を取り留めた。翌年以降、PTA役員や先生が、プール開きの前に圓光寺の地蔵を参るのが習わしになったという。
 同小ではプール開設後も、大正時代から続く臨海学習の伝統は続いていた。プール地蔵のお参りは、福井県の臨海学舎を事前下見する日に、留守役の保護者らによって営まれた。お参りの経験がある上京区の理容師長原毅さん(60)は「夏の間、子どもが水の事故から守ってもらえるようお祈りした。臨海学舎の下見とセットだったから、自然と水の安全全般を祈るようになったのではないか」と話す。一九九五年、同小が休校すると、その習わしも途絶えた。
 ただ、今も圓光寺の檀家の手で毎年新しい前掛けが用意され、西方延命地蔵尊のお堂で大切にまつられている。同寺は徳川家康が開いた学問所に始まり、明治以降は長く尼僧道場だった学びの寺。古賀慶信住職(76)は「ゆかりが分からない地蔵にも、願主の思いが込められている。巡り合わせを感じます」と話す。
【メモ】京都市左京区一乗寺小谷町13、TEL075(781)8025。市バス「一乗寺下り松」下車、徒歩10分。叡山電鉄叡山線「一乗寺」下車、徒歩15分。元西陣小のプールは今も開設当時の姿で残る。市の審議会では「地域の特徴をいかした産業、観光施設」の方向で跡地利用が検討されている。

【2008年2月29日掲載】

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