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(229)岩神さん(京都市上京区)

西陣見守る巨大石
地域の守り神でもある岩神さん(京都市上京区上立売通浄福寺東入ル)
 京都では、辻(つじ)ごとに歴史があり、物語がある。京都市上京区、西陣・大黒町の辻のそれは、岩神さん。木造の社の中に、大人の背丈ほどある大きな石が鎮座している。脇にある駒札には、岩上神社(岩神祠(いわがみのほこら))とあった。
 言い伝えによると、もともとは中京区の二条堀川付近にあったという。徳川家康の二条城築城の際、社殿は岩上通六角に移された。ご神体の岩神さんは、大きすぎて引くことができず、そのまま残したとも、社殿とともに移したとも。定かではない。
 物語が始まるのは、その後。姿が良い、と後陽成天皇の女御中和門院の御所の庭に移したが、夜になると「帰りたい」とすすり泣きの声が聞こえた。はたまた、内裏の築山に引こうとすると、ほえた。子どもに姿を変えて町を歩いた−など、さまざまな騒ぎを引き起こしたとされる。真言宗の僧侶が現在の地に移し、寺の本尊として安置したところ、怪異はおさまった。有乳院岩神寺と称し、授乳の神として信仰を集めるようになった。
 寺は、西陣焼け(一七三〇年)と天明の大火(一七八八年)で類焼、明治維新の前後に廃寺となった。明治時代、西陣の繁栄に支えられて、同じ場所に「岩神座」という芝居小屋が建った。すぐ東には「西陣の聖天さん」と親しまれる雨宝院。人の集まるにぎやかな一角だったことだろう。
 現在、土地は帯製造会社渡文の所有。岩神さんと岩神座にちなんだ「岩神ホール」が建ち、ファッションショーや演劇などの舞台となっている。
 織り屋が軒を連ねる、落ち着いたたたずまいの大黒町。以前の岩神さんは、工場などに囲まれていたため、わかりにくかった。「このあたりの守り神さんなので、お参りしやすいほうがよい」と、渡文取締役の渡邉博司さん(41)。少しずつ整備し、昨年三月、鳥居を新調した。「西陣なので、京都らしいものを」と北山杉の磨き丸太。美しい木肌が町並みともよく似合う。渡邉さんは「美しい町並みがあれば歩きたくなる。人通りがあることは安心につながる。岩神さんをシンボルに、人の集まる、まちづくりを続けたい」と話す。
【メモ】岩神さんは、京都市上京区上立売通浄福寺東入ル北側。周辺は、石畳を敷いた落ち着いた町並み。岩神ホールは、浄福寺通上立売上ル。3月10日から21日まで、オルドリッチ・ホリチェク展を開催。問い合わせは織成舘TEL075(431)0020。

【2008年3月5日掲載】

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