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京都本、人気なぜ

地元愛か 幻想か
【上】「月刊京都」12月号に向けて編集作業をする編集者たち(京都市左京区・白川書院)
【下】京都市が市バスや地下鉄などに掲示している「日本に、京都があってよかった。」のポスター

 「極上の京都」「秘密の京都」「はんなり」…。秋の観光シーズンを迎えた京都の書店には数多くの「京都本」が並ぶ。京都ブームが続く中、出版業界では「困ったら京都本」と言われるほどのドル箱商品だが、実は地元の人が主力の購買層といわれる。今では自治体のポスターまでが「地元愛」をアピールするが、一体なぜなのか。京都好きな京都人と観光について探った。

 雑誌「ディスカバージャパン」を発行する竅iえい)出版社(東京都)は、京都特集の創刊号が完売した成功を受け、9月に発売した1周年号も京都を取り上げた。「京都は日本にとって特別な場所。迷いはなかった」と高橋俊宏編集長。取材に数百万円を費やしたが「確実に元が取れる」と言い切った。

 京都本は京都で最も売れる。

 マガジンハウス(同)によると、京都特集の雑誌は地元で普段の2〜3倍売れ、全体部数の3割を占める。「京都で売れれば全国でも売れるので京都人の動向は注視している」(販売部)

 白川書院(京都市左京区)の「月刊京都」の定期購読者も約5割が京都市内。大垣書店(北区)はほぼ全店で京都コーナーを設ける。光村推古書院(同)が9月に発売した写真集「昭和の京都」は1カ月で異例の約9千部が売れ、「京都人の京都好きがよく表れた現象だ」(企画開発部)と分析する。

 そんな気質を京都市はポスターに採用した。

 2003年作成の「日本に、京都があってよかった。」のPRポスターは地元愛を公言した異色のコピーが注目を集めた。当時企画を担当した市職員山口薫さん(41)は「案を見てぴったりと思い、あっさり決まった」と振り返る。当時、一部マスコミから「京都のおごり」との批判もあった。それでも今では浸透しているのか、「ポスターを欲しがる市民も多い」(政策企画室)という。

地元愛があっても…

「京都本」を手に観光に訪れた女子大生たち。店舗の詳細な情報などが役に立つという(京都市東山区・清水寺)

 ただ、地元愛があってもいつでも見られる安心感からか、実際に名所に足を運ばない人は多い。同級生と京都本を見ながら清水寺を訪れた大学1年池島愛子さん(19)=西京区=は「生まれ育った京都だけどほとんど観光していない。京都本を見ても知らない場所が多く、友人のほうがずっと詳しい」と話す。

 市内の小学校では社会科で郷土の名所を学ぶが、「授業時間の制約もあり、実際に神社仏閣を見学する学校は少ない」(市教委)という。

「本当の姿」足で探す

秋の観光シーズンに、書店に並ぶ京都本。地元の人にも人気が高い(京都市中京区・大垣書店烏丸三条店)

 京都本が地元を再発見する機会を提供する面もある。書店で京都の写真集を見ていた松下和美さん(66)=上京区=は「最近京都を見直したくてよく京都本を買う」と話す。

 だが、一方で京都本の作り手側と地元市民の関係は一筋縄ではいかないようだ。京都関連の本を多く手がける淡交社(北区)の編集者は「どの本にも新しい情報はない。切り口や見せ方で京都幻想を作っているだけ。地元の人は『本当は違うやろ』と思っているが、あえて誰も否定しない。京都人は京都を好きだから」

 住んでいるからこそ本当の京都の姿は意外と見えない。京都本だけに頼らずに、知っているつもりの思いを捨てて実際に歩いてみれば、新たな魅力を発見できるかもしれない。

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【2010年10月13日掲載】