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“中国人客シフト”続々

京の観光業界、団体ツアー増加に対応
味はこってり、高級品も好み
【上】階段や2階ホールまで観光客が鈴なりとなり、大にぎわいのきものショー。来館者の7割は中国からという(京都市上京区・西陣織会館)
【下】中国人観光客でにぎわう家電量販店の免税コーナー。中国語表示も目立つ(京都市下京区・ビックカメラJR京都駅店)

 観光シーズンを迎えた京都の観光業界が増加する中国人観光客を取り込もうと躍起になっている。尖閣諸島周辺の漁船衝突問題の影響が懸念される中、比重が高まる中国人観光の動向と受け入れ側の工夫を探った。

 中国の建国記念日の国慶節(10月1日)の連休中、京都市上京区の西陣織会館は例年以上に多くの中国人観光客でにぎわった。中国人は団体旅行が多く、京都でほとんどのツアーは金閣寺、清水寺、平安神宮、嵐山と同館を巡るコースを組む。

 無料の着物ショーが人気で、昨年度の入館客約26万人のうち、中国人が約7割を占めた。今年に入っても円高で欧米人の来場が細る一方、中国人は7月のビザ発給条件緩和でさらに増え、本年度の入館客はすでに昨年度の2倍を超えた。

 尖閣問題の余波も懸念されたが、昆明市から訪れた主婦(47)は「着物ショーは素晴らしい。日中政府の関係悪化は普通の人はあまり問題にしていない」という。

 中国語通訳案内士の資格を持つ水谷浩さん(52)によると、中国人のツアー旅程は約1週間が多い。関西空港か成田空港から入り、大阪、京都、名古屋、箱根、東京などを巡るルートが一般的で「富士山や電気店街は必ず入れる。宿泊施設の予約がとりにくく、料金が高めの京都は、泊まらないツアーが多い」と説明する。

 中国人観光客は京都で何を求めるのか。食事は「味が濃い食べ物が好きで、『天下一品』のこってりラーメンが喜ばれる。逆に味の薄い京のおばんざいは好まれない」(水谷さん)。買い物では、家電店のビックカメラJR京都駅店(下京区)によると、デジタルカメラやビデオカメラが一番人気。続いて電気炊飯器で、3〜4万円台の高級品を団体で買っていくという。

伝統産業、ホテル…工夫次第

人気のセラミック製の包丁などを集めた商品棚(京都市左京区・京都ハンディクラフトセンター)

 工芸品販売の京都ハンディクラフトセンター(左京区)では陶磁器や小物が売れ筋。最近は人気のセラミック製包丁のコーナーも設けた。20万円台のかぶとや刀の模造品など高価な商品も売れる。

 観光庁の調査によると、昨年の訪日外国人数679万人のうち、中国人観光客は約15%を占めた。1回の滞在で使う中国人の平均額は約14万円と、訪日外国人の平均値(約10万円)以上だった。

 各業界は増加に対応し、グランドプリンスホテル京都(左京区)は今月から客室のテレビで中国語番組が見られるようにし、ビックカメラは免税コーナーで中国語表示を徹底した。西陣織会館は毎日の朝礼で職員が中国語会話の練習に励む。

 中国シフトが進む状況に、ベテランの中国語通訳案内士小玉哲弥さん(59)は「日中関係の変化がすぐに影響するリスクがある」と過剰な依存を懸念する。ただ、今年8月の中国人観光客数は前年同月比57・6%増と急伸が続き、「不況と円高で欧米人が減っているので中国人観光客が頼り」(清水坂の土産店)と焦る業者は多く、伝統工芸業界でも変化が起こりつつある。

 伝統工芸士の清水明さん(53)は、清水焼の絵皿で日本風の3本づめの龍よりも中国で高貴さを表す5本づめの龍が中国人に売れると気づいた。清水さんは「国内では需要に限りがあり、中国人の好みに合わせた作品も必要。伝統産業も海外へ目を向けることが必要だ」と話している。

【2010年10月20日掲載】