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「見る」から「学ぶ」観光へ

リピーター「脱ガイド本」求め
【上】歴史や文化を解説しながら散策するツアー。学びながら楽しむ観光が定着しつつある(24日、京都市左京区・大文字山)
【下】ガイド付きの散策ツアーや京都学講座を紹介するパンフレット。テーマは多彩だ

 神社仏閣を見て回るだけじゃ物足りない。京都の奥深さを学びたい。京都ブームで何度も足を運ぶ観光客が多い中、「学ぶ観光」を求める人が増えている。講師付きの散策ツアーに参加したり、東京や大阪で事前学習する京都学講座も人気で、新たな観光スタイルとして注目を浴びている。

 「ここが鹿ケ谷の陰謀の地。当時の建物は何も残ってません」。24日午後、京阪神の約20人が、講師の山村純也さん(37)とともに京都市左京区の大文字山(如意ケ岳)に登った。銀閣寺の北側登山口と火床を往復する一般的ルートではなく、山頂を通り鹿ケ谷方面に下りる。地元の人もあまり行かない山道だ。途中には平家物語ゆかりのスポットがあり、参加した岩崎真紀枝さん(52)=大阪府枚方市=は「自分だけで行くのは無理だった。感動」と満足げだった。

 山村さんが若村亮さん(37)と2006年に設立した旅行会社「らくたび」(下京区)は、「学びと旅」を融合する散策ツアーや京都学講座を手がける。現地集合、3〜4時間のツアーで3千円程度の気軽さもあり、毎回20〜30人が参加する。東京からほぼ毎週通う獣医の清水明文さん(54)は「ガイドブックに載っていない路地や敷居が高い花街に連れて行ってもらい、やみつきになった」と話す。

大学が協力/出発前に講座

京都学講座を受けている人たち。深く楽しく京都を知ることができると人気だ(23日、大阪市浪速区)

 なぜ今「学ぶ観光」なのだろう。

 「観光業界では数年前から、地元の人が隠れスポットを提案する『着地型旅行』が話題になっている」とJTB広報は明かす。

 旅慣れた人が増えてニーズが多様化し、団体行動を避ける人が多くなったことが背景にあるが、特に、リピーターが多い京都観光では「より深く」を追求する着地型プランは最適だという。

 同社は06年、同志社大とタイアップし「ほんものの京都を見る学ぶ味わう」を掲げて、大学での講座と現地見学・体験を組み合わせたツアー「楽洛キャンパス」を始めた。京都観学研究会も立ち上げ、歴史人物や美術、建築など観光資源の調査研究も行う。代表幹事の西村卓教授(経済学)は「多くの人が月並みな京都学では物足りなくなっている。大学の専門的研究が観光に十分生かせる」と自信をみせる。

 旅先だけでなく、出発前に学ぼうという人も多く、京都学講座は関東や大阪など各地で頻繁に開かれている。「庭園」「幕末」「魔界」などテーマも多彩だ。

 今月中旬、大阪市内で開かれた「大人の京都学講座」に参加した会社員の佐藤理恵子さん(42)=吹田市=は受講歴3年以上。京都本にも載っていない歴史や裏話を教えてくれるのが魅力といい「同じ観光地でも、見方が変わって面白い」。学んだ知識を元に散策するのが楽しみという。

 地元の京都府民も負けてはいない。京都市伏見区の一瀬岩雄さん(65)は「若いころは古くさい街だと思っていたけど、学べば学ぶほど深い」といい、週の大半を京都学講座と現地研修に費やす。「らくたび」や、歴史地理史学者中村武生さんの歴史散策の参加者も府民が大半を占める。

 土地の歴史や文化を知ることは、地域に住む人への尊敬や愛着につながる。「学ぶ観光」が全国で定着すれば、地域振興や交流の輪が広がるだろう。

【2010年10月27日掲載】