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渋滞解消 まだまだ

紅葉シーズン 悩む観光地
道路の渋滞のため、観光バスを途中で降りて、嵐山まで歩くツアー客たち(京都市右京区)

 紅葉シーズンがピークを迎えた京都は、市内を中心に今秋も多くの観光客でにぎわった。公共交通の利用を促す「パークアンドライド」の拡充や歩行者天国も一部で実施されたが、渋滞解消の決定打とはならなかった。「観光公害」に悩む地元住民からは、現行の受け入れ態勢に不満を訴える声も多い。混雑する市内を巡り、京都観光の課題を探った。

市バス体験乗車 東山二条−京都駅 1時間すし詰め

 11月20日の土曜日、清水寺(東山区)〜金戒光明寺〜永観堂〜南禅寺(以上左京区)を回ることにした。

 午前10時半、京都駅の市バス乗り場へ。「最後尾」の看板を掲げ市交通局職員が立つ。20メートルほどの列に気後れするが、バスが次々と来て8分で乗る。

 渋滞なく、五条坂まで16分。降車後、大型バスが体の横を走り抜ける坂道を清水寺へ。かなりの人混み。拝観後、産寧坂での昼食は10分待って入店した。

 午後1時15分、金戒光明寺へ向かう。バスは満員で乗れず、3台目にやっと乗り込んだ。寺の境内は、人は多いものの比較的ゆったり拝観できた。交番で永観堂への道を尋ねる。多くの観光客が同じ質問をするという。

 天王町交差点から南の白川通は幅も狭く、渋滞。永観堂は拝観券売場に人の列。境内は、紅葉の写真を撮るために立ち止まる人が多く、ぶつかってしまう。南禅寺は午後4時でも盛況で、行列のためトイレは我慢した。

 午後5時前、東山二条から京都駅を目指す。バスはすし詰め。4台目に乗れたが、息苦しい。道も大渋滞。東山三条で「京都駅まで軽く1時間かかります。京都駅に行く人は地下鉄に乗り換えを」の車内放送。観光客は「どうしよう」と戸惑い、10人ほどが降りた。が、祇園で再び満員になり、ドアが閉まらない。6時2分、京都駅に着いた。

 一方の嵐山地域。この日午後1時〜5時、長辻通(渡月橋北詰め〜新丸太町通)が「歩行者天国」になった。罧原(ふしはら)堤四条から渡月橋間は大渋滞に。進まない観光バスを降り、歩くツアー客も目立つ。岐阜市の主婦(63)は「嵐山で昼食の予定なのに1時間も遅れている。途中から20分ほど歩かされ、もう疲れた」と話した。

バスに乗れず 仕事休む日も 住民生活に 大きい影響

今年も紅葉狩りに多くの観光客が訪れた。観光客も住民も納得できる環境整備が求められる(11月20日、京都市左京区・永観堂)

 行楽の季節は観光地周辺の住民生活への影響も大きい。特に交通問題の悩みは深刻だ。

 清水寺近くの若林みゆきさん(60)は「バス通勤だが、夜間拝観を見に行く人と重なり、バスに乗れないことや渋滞で1時間以上かかることも。今年は仕事を休んだ日もあった」。清水道沿いに住む女性(65)は二男が幼いころ、玄関前で車にはねられたという。「今は孫から目が離せない。排気ガスもつらいし、車の通行をどうにかして」と嘆く。

 東福寺近くの主婦冨永彩さん(36)は「買い物で車を使うと、観光客にののしられる。地元用に車の通行証がほしいが、寺や警察に申し入れても話にならない。観光客が来るのはよいが、住民が気持ちよく迎えられる状況を作って」と訴えた。

 観光地ではごみを捨てたり、騒いで生活道路を歩くなどマナーを守らない観光客は少なくない。京都市で観光客5千万人を迎える今、住民の声を聞きながら、行政や観光地が一体になって環境整備が急務だ。

パークアンドライド 朝夕はやや効果

 渋滞緩和策として京都市などは臨時駐車場を設け「パークアンドライド」を実施した。今年は過去最多の3600台分を用意した。

 市や府警によると、午前中の渋滞は緩和傾向にあり、夕方も発生から解消までの時間が短くなった。記者がバスに乗った20日午後5時ごろ、東大路五条を先頭に南行が最大約2・7キロだった。

 交通局は、清水寺や金閣寺などの名所へのバスを一昨年より2割増発した。京都駅前乗り場では、数年前は駅ビル入り口までバス待ちの列が伸びたが、今年は改善したという。五条坂では臨時のバス停留所も設けた。

 東大路通の渋滞がひどく、東山三条から京都駅まで約1時間かかる場合、「振替乗車票」を渡し、無料で地下鉄に乗り換えてもらう対策を取っている。

利用客、以前の水準に戻らず

 JR西日本と京阪電鉄は、紅葉名所に最寄りの「東福寺駅」で乗り換える観光ルートをPRしている。JR東福寺駅の利用客数は前年と同じ曜日と比較して20日は9・2%減だったが、好天に恵まれた21日は9・9%増、祝日の23日は24・4%増と大きく伸びた。

 JR東海の東京−新大阪間(新幹線・11月1〜23日)の利用客数は前年同期比103%だった。ただ、昨年は新型インフルエンザの余波もあった。一昨年と比べると93%で、以前の水準には戻っていない。

 嵐山の貸しボート業者は「ボートも空きがあり、人混みも去年より少ない感じ。最盛期は渡月橋の歩道が埋まったが、今年は隙間が目立つ」と話した。

観光客100人にアンケート 92%「満足」「やや満足」

 紅葉狩りの人で混み合った11月20〜23日、京都新聞文化観光取材班は、「京都観光アンケート」を行った。好天に恵まれ、紅葉の満足度は高かったが、不況や飛び石連休の影響か短期滞在が目立った。課題の交通施策では、個別意見で渋滞対策を中心に多くの不満が聞かれた。
 アンケートは三千院、南禅寺、嵐山などで観光客100人に実施。うち92%が今回の観光に「満足」か「やや満足」と回答した。
 日程は日帰りが41%、1泊が26%を占める一方、3泊以上の宿泊は6%に過ぎず、短期滞在型が主流だった。また京都観光が初めての人が6%に対し、10回以上の人が31%を占め、リピーター率の高さを示した。
 個別意見では、交通面でバス路線の複雑さや本数の少なさを指摘する声が目立った。

不満や提言

【交通】
・道が混雑しすぎ。地下鉄の路線が少ない(東京都・30代女性)
・バスが少なく、積み残しも多い。もっと臨時バスがほしい(秋田県・30代男性)
・バス路線が複雑。同じ目的地のバス停が二つあり、困った(神奈川県・40代女性)
・地下鉄の行き先の表示が不親切。今いる駅の場所が分かりにくい(茨城県・50代男性)
・バイクが多くて車で走りづらい(岐阜県・40代男性)
・嵐電の運賃一律200円は近くで降車すると不満(滋賀県・20代男性)
・大きな駐車場を一つ造ってシャトルバスを出してほしい(石川県・50代女性)
・バスやタクシー専用レーンが必要。一般車両と区別を(静岡県・40代男性)
・バスが混雑して前から降りられない。後ろで運賃を払えないか(東京都・50代男性)
・パーク&ライドを後で知った。府外の人に周知が足りない(愛知県・40代男性)
・やっと着いたと思ったら寺の拝観時間が終わっていた(福岡県・60代女性)
・嵐山の河川敷を一時的に駐車場にしてはどうか(京都府・70代女性)
・北山駅を金閣寺の近くと思った。観光地と連動した駅名がいい(茨城県・50代男性)

【景観】
・街の看板が汚い。観光地で音楽を流すのはふさわしくない(神奈川県・70代男性)
・京都駅のデザインが悪い。もっと京都っぽくしたほうがいい(愛知県・20代女性)

【設備】
・女性用トイレが少なすぎてすごい列。トイレの入り口も中も狭い(山口県・60代女性)
・ペット同伴の観光地が増えればよい。愛犬家の門を狭めている(三重県・60代男性)
・ベビーカーで観光しづらい。オムツを替えられる場所も少ない(大阪府・30代女性)
・コインロッカーをもっと各地で増やしてほしい(岐阜市・30代男性)

【対応】
・京都なら何でも売れると思っている。もっと接客や価格に工夫を(大阪府・30代女性)
・韓国語、中国語の表示が少ない。バリアフリー対応も疑問(愛知県・20代女性)
・お坊さんがガイドしてくれればリピーターが増えるのでは(静岡県・50代男性)
・歩道を歩いているのに、自転車でベルを鳴らされて不愉快(大阪府・30代男性)
・早く安いルートを地元で教えて欲しい。外からだと分からない(福岡県・60代男性)
・雨が降った時、寺の間でレンタル傘をやってほしい(岡山県・50代男性)
・寺社や店舗が早く閉まりすぎ。ライトアップの夜間拝観は助かる(石川県・50代女性)

【料金】
・拝観料が高くて値段設定がばらばら。全寺社フリーパスが欲しい(広島県・40代男性)
・ホテルの予約が取りにくい。空いている宿の紹介をしてほしい(東京都・50代女性)
・食品の土産物は値段が高く、いい加減な商品もある(島根県・60代女性)

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【2010年12月1日掲載】