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ご当地グルメで地域元気

肉じゃがの舞鶴にブーム探る
「うちこそ発祥の地」とそれぞれの肉じゃがを手にする舞鶴市の伊庭節子会長(写真左)と呉市の藤井泰彦会長=2010年11月27日、舞鶴市北吸
 静岡県の「富士宮やきそば」など「B級ご当地グルメ」でまちおこしや観光振興を狙う取り組みが全国的にブームとなる一方、商業的な思惑が過熱して「負」の側面も生じている。全国の先駆け的存在として、「肉じゃが」の普及に16年前から取り組んだ舞鶴市の例をたどりながら、地域に根ざしたご当地グルメのあり方を考える。

 護衛艦が並ぶ舞鶴市北吸の自衛隊岸壁に昨秋、「まいづる肉じゃが祭実行委員会」(同市)と、「くれ肉じゃがの会」(広島県呉市)の大鍋が並び、観光客や市民に無料で提供した。
 「肉じゃが」は、明治期に東郷平八郎元帥が英国留学時に食べたビーフシチューを、海軍でアレンジしたのがルーツとされる。東郷元帥の赴任地だった旧軍港の両市とも「発祥の地」と主張する。
 正当性を譲らない「呉」側の藤井泰彦会長(63)は「舞鶴は『ご当地グルメ』という言葉もないころから活動を始めた火付け役。その点は認めざるを得ないね」と悔しそうに話す。
 舞鶴市の活動は1995年に始まった。商店街活性化などに取り組んでいた実行委会長の伊庭節子さん(62)らが、市内の海上自衛隊に残る「海軍厨業管理教科書」の調理法を再現し、活性化に生かそうと発案した。
 ところが「どこの家にもある家庭的な料理を広めるのは難しかった」(伊庭さん)。舞鶴ではカニやブリなど高価な食材や料理が観光面の軸として重視され、単価が低く身近すぎる肉じゃがは飲食店が提供を渋ったという。
 呉など旧軍港4市の連携キャンペーンや市内外でイベントを催したり、のぼりを作って提供店に掲げるなど努力を重ねた。今では市内の19店で提供されるようになり、観光協会は「肉じゃがマップ」を発行し、土産用レトルト品やパンメーカーとの共同企画品も売られている。
 激辛料理で注目を集める「京都激辛商店街」(向日市)やいなりずしなどをPRする「伏見稲荷名物ひろめ隊」(京都市伏見区)など食を通じた地域活性化が各地で進む。
 「自分のまちに誇りを持ち、その成り立ちを知ることは大切」と、観光ボランティアガイドとしても活動する伊庭さんは話す。「歴史や文化、土地に根ざしたものは2、3年ではなくならない。舞鶴も定着まで15年かかった。市民が伝えたいと思えるような熱意が必要なんです」

舞鶴肉じゃがレシピ

「舞鶴肉じゃが」の基となった海軍厨業管理教科書より
【材料】生牛肉、蒟蒻(こんにゃく)、馬鈴薯(ばれいしょ)、玉葱(たまねぎ)、胡麻油(ごまあぶら)、砂糖、醤油(しょうゆ)
【調理】
 一、油入れ送気
 二、3分後牛肉入れ
 三、7分後砂糖入れ
 四、10分後醤油入れ
 五、14分後蒟蒻、馬鈴薯入れ
 六、31分後玉葱入れ
 七、34分後終了
 【備考】
 一、醤油を早く入れると醤油臭く味を悪くすることがある
 二、計35分と見積もれば十分である

人気過熱でトラブルも

静岡県の「桜えびやきそば」、愛媛県の「じゃこ天」など全国からご当地グルメが集まった舞鶴市内のイベント会場は、大勢の人でにぎわった(2010年12月5日)
 B級ご当地グルメの全国グランプリで優勝すると大きな経済効果を地元にもたらす一方、商業ベースの思惑が前に出すぎるとトラブルが生じる。
 B級ご当地グルメの代表格となった「富士宮やきそば」は、無断で名称を使う露天商が急増し、特徴の蒸しめんや肉かすさえ使わない例もあるという。消費者からクレームを受ける側の「富士宮やきそば学会」は、「守ってきたブランド力を落とされたり、地元活性化に寄与しないのは趣旨が違う」と悩む。
 山形県新庄市では2009年、NPO法人が市内で企画したグルメコンテストを、開催期間中に無期限延期とした。客の投票により、優勝店には100万円が贈られる計画だったが、「店に設置した投票用紙を、店側が大量に投票してしまう『組織票』を防げなかった」と担当者は肩を落とす。
 静岡県裾野市ではギョーザ店などの団体がモロヘイヤを使った水ギョーザを売り出したが、「食べたこともないメニュー、と市民の反応は後ろ向きで批判が多かった」と「すそのギョーザ倶楽部」事務局担当者は話す。全国グランプリでは好成績を収めたものの、「市民への浸透はまだ開拓の余地が残る」という。

歴史と住民の熱意 不可欠

「甲府鳥もつ煮」でB級ご当地グルメの全国グランプリで優勝した山梨県のグループ(2010年9月、神奈川県厚木市)
 著書に「B級グルメが地方を救う」がある新潟大法学部の田村秀教授 「B級ご当地グルメ」は、地域活性化のために「食」を手段として関心を引きつけ、人に来てもらうことを目指すものだ。消費者側が求めるのは「比較的安く」「うまく」「地域性がある」もので、特徴がないものや取って付けたように作り上げたものは、生き残りが難しい。また、飲食店が観光客で土日曜だけ繁盛するようなメニューはブレイクしない。観光客だけでなく、ふだんから地元の人に愛されなくては、本当の地域活性化につながらないと言えるだろう。
【2011年1月19日掲載】