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酒蔵公開で魅力醸成

新たな観光資源へ期待
昔ながらの酒蔵で酒造りに見入る見学者たち(京都市伏見区・招徳酒造)
 新酒の蔵出しがピークを迎えている酒造会社で酒蔵公開の動きが広がっている。少量生産の「ほんまもん」が見直されている日本酒の魅力が新たな観光資源となるか。酒どころの伏見と灘を中心に探った。

 「昔ながらの造りで手がかかりますね」
 招徳酒造(京都市伏見区)の酒蔵で米を蒸し、ほぐす職人の仕事ぶりに見学者から感嘆の声があがる。東京から訪れた会社顧問小林剛さん(66)は「何回も京都に来たが、酒蔵は初めてで面白い。ここの酒を買って帰る」と満足顔だ。案内する木村紫晃社長(55)は「観光客は今までの観光では飽き足りない。蔵の公開は伏見の新しい観光の切り口になる」と言い切る。
 洛中では、おととしマンション1階を改築し、創業地で35年ぶりに蔵を再開した松井酒造(左京区)が最新機器を導入した蔵で積極的に見学を受け入れる。多彩な利き酒も楽しめるのも魅力で女性の見学者が多い。
 これらの公開は、観光企画会社のぞみ(中京区)が昨年から始めた。酒蔵を新たな観光資源とする狙いで、今年は2月下旬まで週末に2500円で公開中。関東を中心に多くの予約が入るという。

海外にも広がる関心

酒蔵を見学後、多様な銘柄の利き酒も楽しみの一つ(京都市左京区・松井酒造)
 味が深い日本酒は海外でも関心が高い。米国人の日本酒ジャーナリスト、ジョン・ゴントナーさん(48)が東京で開く酒講座は多くの欧米人が受講する。1月末に関西ツアーで齊藤酒造(伏見区)を訪れたゴントナーさんは「西洋人にとって日本酒は新鮮。奥深さに優れ、微妙な味わいが人気」と魅力を語る。
 一方、兵庫の灘では一足早く以前から観光に力を注ぐ蔵が多い。阪神大震災で蔵が倒壊した浜福鶴銘醸(神戸市)は、新工場にガラス越しに見学できるコースを設け、年間5万人が訪れる。灘には震災後に資料館やレストランを併設した酒蔵が多く、各蔵は限定酒のほか、酒カレーなどオリジナル商品も販売する。灘五郷酒造組合は「古い酒蔵が残る京都と違い、灘は新しい工場が多い。震災復興で観光面に行政と一緒に力を入れたため、見学しやすくなっている」と分析する。
 ただ、日本酒の販売面では苦戦が続く。伏見酒造組合の2009年の販売数量は約10万キロリットルと1970年代のピーク時からほぼ半分にまで落ち込んでいる。灘も同様に減少傾向だ。日本酒離れ対策として伏見酒造組合では、COCON烏丸(下京区)で毎年期間限定で日本酒バーを開いている。昨秋は前年比約2倍の客が入るなど若者を中心に徐々に浸透してきた。

灘、伊丹と連携し関西で日本酒盛り上げる

【上】酒造工程の説明を通訳するゴントナーさん(左から3番目)。欧米人に人気の酒蔵見学ツアーを企画し訪れた(伏見区・齊藤酒造)
【下】見学コースを設けている浜福鶴では醸造時の匂いを体感できるように工夫している(神戸市・浜福鶴銘醸)
 酒蔵見学は日本酒ファンをさらに広げる取り組みだが、人員やスペースの問題もあり、常時公開していない蔵が多い。伏見でも見学コースを持つ蔵は少なく、「業者向けには蔵を見せるが、業務上一般公開は難しい」(宝酒造)といい、観光との両立で課題が残る。
 だが、外国人向け酒蔵ツアーを企画する通訳ガイド中村悦子さん=東京都=は「海外で日本酒の認知度が高まっている今こそ、蔵を開いて本当においしい酒を見せることで日本を理解してもらえる」と強調する。
 それぞれの魅力がある伏見、灘、伊丹の老舗酒造会社11社は1月に「日本酒がうまい!」推進委員会を立ち上げた。ファン拡大へ日本酒の楽しみ方を共同で提案する取り組みだ。さらに各地で酒蔵公開の連携に発展し、関西全体が日本酒を楽しめる場所になることに期待したい。

カウンターで気軽に

カウンター席で伏見の銘柄約90種類が楽しめる酒屋。3銘柄を選べるセットが人気(伏見区・油長)
 おいしい日本酒に気軽に触れられる店や催しも多い。京都市伏見区の大手筋商店街にある酒屋「油長」では、伏見の約90銘柄を扱う。カウンターで酒も楽しめ、奥田浩二社長(40)は「3銘柄を選べるセットがおすすめ。伏見の酒は柔らかく、京料理と合わせるのもいいですよ」。藤岡酒造(伏見区)では、ガラス越しに蔵のタンクを見ながらカウンターバーで酒を楽しめる。
 伏見銘酒協同組合は伏見区丹後町の同組合で13日午前11時〜午後3時に試飲販売を楽しめる「酒蔵開き」を催す。
 灘五郷酒造組合は神戸市中央区の「北野工房のまち」に昨年12月にアンテナショップを設けた。異人館街に近く、土産に酒を買い求める観光客が多い。

【2011年2月2日掲載】