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「おひとりさま」人気

温泉旅館プラン続々
女性一人客の受け入れを始めた山あいの温泉宿。お香が漂うアジア風の空間で、ゆったりとくつろげるという(亀岡市・肥前屋翠泉)
 温泉旅館といえば、かつては男性の団体客が主流だったが、個人客へとシフトする中、家族や女性連れが目立ってきた。さらにここ数年は、一人で訪れる人が増えているという。「おひとりさま女子」ブームが拍車をかけるが「おひとりさま男子」も負けてはいない。女性一人を敬遠していた旅館も「おひとりさまプラン」を設けて歓迎する。女性を取り込むためイメージチェンジを図る温泉街もある。

くつろぎの空間演出

到着すると、排毒効果があるというデトックス・スープでもてなされる。夕食も地元の有機野菜を使い、女性客に人気だという(肥前屋翠泉)
 京都の奥座敷といわれる亀岡市の湯の花温泉。JR亀岡駅から車で約20分の山間部に7軒の宿が並ぶ。旅館「肥前屋翠泉」は、昨年7月から「のんびり一人旅プラン」を作り、女性一人客の受け入れを始めた。数年前から電話で問い合わせは増えつつあったが、7代目おかみの水巻久美さん(51)は「昔から女性一人のお客さんやと万一事故があったらあかん、と言われてきたので断ってきた」と明かす。しかし報道などで「おひとりさま」が話題になり「時代の流れ」と決断した。
 反響はあった。多い時は週に2、3人が訪れる。料金は2万5千円前後と安くはないが、宿は12室で、団体客もいないため落ち着いた空間。到着すると、体内の毒素を排出する効果があるという、野菜と竹炭が煮込まれたスープが出され、夕食は地元の有機野菜が使われ、「女子」を引きつける。
 どの客も同様にもてなすが、おひとりさまにあえて提案することが一つ。「ご飯の前に布団をひきましょうか」。誰の目も気にしなくていい空間で気ままな時間を過ごしてもらうためだ。食事は部屋食も可能だが、大半の人が1階の個室を選ぶという。人の気配を感じながらも一人になれる時間。食事中も携帯電話と本は手放さない人が多いという。
 「普段忙しくされているんだろうなと思う方が多い」と言う。館内にはお香をたき、七福神やお福人形などを随所に置いて、やすらぎを演出する。出発時に「本当にゆっくりできました」「また頑張れます」と笑顔を見るとほっとするという。

男性客狙い 高級企画も

今月1日オープンした地域交流施設「大津市おごと温泉観光公園」。イメージチェンジに地元住民も喜ぶ(大津市雄琴)
 男性のおひとりさまも増えている。京丹後市の夕日ケ浦温泉「一望館」では2年前に春秋限定で「大人の男一人旅プラン」(2万円強)を始めたところ、20代後半〜30代に好評を得た。間人漁港近くの料理旅館「三養荘」で、地元でとれたカニを味わえる「一人旅専用本物の間人ガニ堪能プラン」(6万6千円)を利用するのは関東圏の40代後半〜60代の一人男性。レンタカーで訪れ、部屋でウイスキーを飲みつつ、くつろぐという。

 「男性の町」からイメージチェンジを図る温泉街がある。大津市の雄琴温泉。かつては男性団体客ばかりだったが、約20年前から若手後継者が集まり、各地でPRイベントを開いたり、最寄り駅に足湯を作るなど地道に活動を続けた。
 おごと温泉旅館協同組合の佐藤祐子副理事長(40)は「ここ1、2年でようやく手応えを感じるようになった」と喜ぶ。昨年の宿泊客数は44万人を超え、過去最多に。女性だけのグループや家族連れが増えた。今春からは、周辺の棚田などを歩き、温泉と近江牛料理を組み合わせた健康志向のツアーを企画する予定だ。女性の一人客はまだ受け入れていないが、「動向を見て考えたい」と話す。
 今月1日、温泉街にオープンした「大津市おごと温泉観光公園」には地元住民が詰めかけた。近くの主婦岡本雅子さんは長女の莉沙さん(3)と足湯につかり「昔とずいぶんイメージが変わってきた。来やすくなってうれしい」とほほえんだ。

「一人旅」5年連続で増 予約サイト運営会社調査 癒やし求め自己投資

 インターネット大手の宿ホテル予約サイト「じゃらん」は、数年前「一人旅歓迎の宿」特集を設けた。運営する「リクルート」(東京都)が2005年から行う宿泊旅行調査で「一人旅」が5年連続で増加するなどニーズが高まったためだ。一人旅は今や12・9%を占める。
 「おひとりさま温泉」の著作がある「温泉ビューティ研究家」の石井宏子さん=東京都=は「『一人』を推奨しているのでなく、誰とも都合が合わなくても癒やされたいと思った時は、出かけようと提案している。温泉に行くことは、今では観光というより自己投資に近い」と分析する。
 「家族や職場は楽しいけれど、どこか気を遣う。全部自分で決められる一人旅は心の解放にもつながるのでは」とみる。「年齢性別問わず増えている。まずは友人と行って別々の部屋を取る人もいますよ」と話した。
 疲れた時は一人、楽しいおいしいを共有したい時は、みんなで。さらに健康や体験型も加わり、温泉旅行の選択肢はますます増えそうだ。

【2011年2月9日掲載】