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細やかな着地型観光広がる

旅行会社、団体「地元資源」生かす
西陣地区の地元旅行会社が企画したツアーで、西陣織の工房を見学する観光客たち(京都市北区)
 観光客を受け入れる地域の旅行会社や団体が、地元ならではの資源を生かして企画するツアーが注目を集めている。「着地型観光」と呼ばれ、大手旅行会社にはない細やかでユニークな取り組みが京都でも広がっている。

伝統産業の技に参加者感動 アニメ・漫画や魔界ツアーも

アニメ作家九里一平さんが描いたキャラクター鍔鳴剣屍郎に扮した俳優と市内を巡るツアー参加者たち(京都市東山区・六道珍皇寺)
 西陣地域に本社がある旅行会社、萬転(京都市北区)は土地柄を生かして「西陣の職人たちと出会う旅」を昨年から企画している。きっかけは不況に悩む近所の商店や和装業者の声。京都でツアーを企画して外へ連れ出す「発地型」旅行ばかり手掛けていた時、「たまには地元へ客を連れてこいよ」との声でひらめいた。衰退する和装産業を盛り上げようと「職住一体のものづくり」の現場を職人の協力も得て紹介する取り組みを始めた。
 地元で生まれ育った西河豊治社長が、歩きながら西陣が全盛だった時代や町家の特徴を解説。西陣織の職人を工程ごとに回り、技を見る。参加者は10人程度と小規模だが、「京都観光のリピーターが多い。みな職人の技に感動する。京都でしかできないことをやりたい。地元の豆腐屋を巡るツアーなども近く企画したい」と西河社長は力を込める。
 京都文化を支える伝統産業を活用する動きはほかにもある。ボランティア通訳ガイドの中野重治さん(63)=大阪府高槻市=は、外国人観光客に伝統の技への理解を深めてもらうため、昨年5月「関西伝統工芸品ボランティアガイド協会」を京都で立ち上げた。
 会員は約50人で月2回程度、京都で研修会を開く。ガイドでは京の職人工房を訪れ、製造工程を見せる。これまで約15件を案内し、デンマークから訪れた客は、京畳の作り方を学んで帰ったという。
 ただ、伝統工芸に特化すると需要は思ったほど伸びず、苦肉の策で観光地の案内とセットにしたという。中野さんは「無償なのでバックパッカー中心と思ったが、大学教授などの知識層が多かった。一般の外国人の伝統工芸への関心をどう高めるかが課題」と話す。
 アニメや漫画を生かした変わり種のツアーもある。東山区の六道珍皇寺を訪れた観光ツアーに同行したのは刀を帯びた侍姿の「鍔鳴剣屍郎(つばなりけんしろう)」。プロの俳優が扮(ふん)する剣屍郎は「科学忍者隊ガッチャマン」などを生んだ京都市出身のアニメ作家九里一平さんが描くホラー漫画の主人公だ。
 地元の旅行会社ツアーランド(中京区)は、江戸期の京で怨霊を退治する剣屍郎にちなんだスポットを巡る「京の魔界巡りツアー」を先月実施した。みなとや幽霊子育飴本舗、千本ゑんま堂、薬師寺など小野篁(おののたかむら)や幽霊伝説に関する場所を回る。昼食は特別メニューで辛めの地獄カレーうどんセットもつく。
 一風変わったこのツアーは観光庁のニューツーリズムモニターツアー事業に選ばれた。企画した岡田榮社長は「地元業者は小回りがきき、大手が知らない場所を細やかにガイドできる。地元ならではの着地型観光にこそ小さい業者が生き残る道がある」と指摘する。

「より深い京都」を求めるリピーター 坂本「都草」理事長分析

 京都検定合格者らでつくるNPO法人「都草」(上京区)の坂本孝志理事長は着地型観光の人気について「活動的な団塊の世代が観光を楽しむようになったことも一因。『より深い京都』を求めるリピーターが多く、一方的な説明型のガイドは敬遠される。夫婦など少人数で町歩きしながら地域の人との対話型の観光が求められる」と分析する。

販売力など課題 金井立命大教授指摘

 共著で「着地型観光 地域が主役のツーリズム」を執筆した金井萬造立命館大教授(観光学)は「魅力あるツアーは地元の人が作れるが、実際には販売力がないのが実情だ。大手業者では50人乗らないとバスはもうからないが、着地型観光は受け入れ態勢も小規模で客の人数も少ない」と指摘。「地元でもてなす人材の育成も課題で、滞在型にするには内容の充実も必要になる。着地型観光が定着するには10年ぐらいかかるだろう」とみる。