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観光バリアフリー 着々

障害者ら受け入れへ工夫 京の団体、旅行会社
アイマスクを着け、アイヘルパーの訓練をする「ユニーズ京都」のメンバーたち(京都市北区・京都ライトハウス)
 由緒ある寺社が大きな観光資源の京都だが、段差や坂道がつきもので、車いす利用者や身体に障害がある人にとって巡りやすい都市ではないと思われがちだ。しかし、誰もが気軽に訪れてほしいと、当事者団体や旅行会社は工夫を凝らし、受け入れ態勢を整えようとしている。行政も「ユニバーサル(すべての人に利用可能な)観光」の旗を掲げ、取り組みを始めた。

目の見えない人 案内ボランティア養成 車いすの利用者 トイレなど施設の情報

携帯電話のGPS機能とHP「ばりかん!京都」を連動させた新システム。車いすでの観光の手助けになる(京都市上京区・府立医科大)
 「もうすぐ階段を上ります」「いすに座ります。ここが背もたれ」。4月下旬、京都市北区の京都ライトハウスで市民団体「ユニーズ京都」のメンバーがアイマスクを着け、目の見えない人を案内する訓練をしていた。京都観光を手助けするボランティア「アイヘルパー」たちだ。
 代表の大西正広さん(67)=左京区=が2008年に養成講座を始め、約40人が登録する。受講者は計5回の座学や実習を行い、ノウハウを学ぶ。今年は15日からで、募集中という。
 階段や曲がり角など誘導の仕方に加え、観光案内で大事なのは、景色や花の色など雰囲気や季節感を言葉で伝えることだ。1期生の宮元まゆみさん=山科区=は「表現は難しいが、少しでも感動を味わってほしい」と、普段からどう伝えるか考えを巡らす。同団体では、飲食店の点字や音声メニューの普及にも力を入れている。
 全国脊髄損傷者連合会京都府支部は、観光地のバリアやバリアフリー情報を充実したホームページ(HP)「ばりかん!京都」を作成した。車いすで観光できる寺社が40カ所、公園や娯楽施設30カ所、飲食店120店など、行き方や障害物の有無、利用できるトイレの場所などを写真付きで掲載する。今月から携帯電話のGPS機能とも連動させ、より便利になった。
 「外出しようという気持ちがあれば外出できる程度に街のバリアーは改善されてきた」とHPを制作した山本英嗣さん(43)=亀岡市=は話す。ただし、飲食店に入ろうとすると「車いすはお断り」と言われたり、バスや電車に乗るときに手を貸してくれる人がいなくて苦労したとの声は今も多い。寺社によっても対応は異なる。「少しの段差は手助けで超えられる。市民の理解が広がればもっと旅はしやすくなるはず」と話す。

先進地 高山市 車いすで問題なく

京都市発行の「見ないで楽しむ京の旅」に掲載された詩仙堂。滝から落ちる水やししおどしなど音に満ちている(京都市左京区)
 ユニバーサル観光を取り入れた先進地として知られるのは岐阜県高山市だ。観光客減少に歯止めをかけようと1996年、「福祉観光都市」を掲げて、バリアフリー化を進めてきた。
 車いす利用者や高齢者をモニターとして招き、課題を調査した。今では市内80カ所以上の車いすトイレや段差の解消、休憩用ベンチ、福祉バスの運行などが整備され、車いす利用者はほぼ問題なく観光を楽しめるという。
 その後、対象を目や耳の不自由な人や外国人にも広げている。できる手助けをするという市民の意識も高まっているという。飛騨高山東京事務所は「京都は何もしなくても観光客が押し寄せるが、高山はそうではない。市全体でもてなしたい」と話している。
 京都市は、2010年の「未来・京都振興計画」で、ユニバーサル観光の推進をうたう。09年にHP「京都ユニバーサル観光ナビ」を開設し、車いすで楽しめる観光コースなど紹介したが、以降は更新していない。観光振興課は「今年は充実させる」と話す。保健福祉課は4月、冊子「見ないで楽しむ京の旅」を発行した。寺社やお香、食などで、四感を研ぎ澄ます楽しみ方を提案している。

看護師ら同行 旅のアシスト

 要介護のお年寄りや障害者の旅を看護師やヘルパーが同行し、手助けする会社「旅のお手伝い 楽楽」(中京区)は05年、佐野恵一社長(26)が立ち上げ、今は年間350人以上の利用者がある。流動食への変更や入浴介助など、その人に合ったサポートを提供することで「できないと思い込んでいた旅は実現する」と話す。
 06年設立の「バリアフリー旅行ネットワーク」(中京区)は、旅行業者や介護タクシーなど全国100事業所が加盟、意見交換や研修などを行っている。事務局は「情報が不十分で外出に踏み切れない声も多い。京都市の観光案内所などに専門の職員を置くことが重要だ」と指摘した。
【2011年5月11日掲載】