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伝統漁法で琵琶湖の恵み実感

上り簗「次代に伝えたい」
簗で捕まえた魚を出荷する北船木漁協の漁師たち(高島市安曇川町)
 春から夏に向かう時期は、琵琶湖の漁がいっそう活気づく季節でもある。滋賀ならではの伝統漁法で捕る魚の種類も多様になり、「琵琶湖の恵み」の豊かさを実感できる。琵琶湖の周囲で魚に親しむ人たちを訪ねた。

現場で小売りも

北船木漁協が安曇川に設置しているカットリ簗。琵琶湖からさかのぼってきた魚がカットリグチ(写真手前)に誘導される仕組み
 琵琶湖に近い高島市の安曇川の最下流部。川幅約150メートルの位置に、上流に向けて扇を広げたように簀(す)が張り巡らされている。地元の北船木漁協が8月まで管理している簗(やな)だ。
 簗漁は全国の河川で行われているが、ほとんどが産卵のために川を下るアユを狙う「下り簗」。一方、琵琶湖水系の簗漁は、湖からさかのぼる魚を捕らえる「上り簗」だ。湖西では「カットリ簗」とも言う。
 川をさかのぼろうとする魚の習性を利用し、扇状に設置した簀に沿って魚を川岸に誘導して簗の両端にある「カットリグチ」に落として捕らえる。カットリグチからつながる生け簀の網を上げてもらうと、繁殖期にみられる桜色の婚姻色が鮮やかなウグイが勢い良くはねた。
 琵琶湖の周囲では8月までが簗漁の季節。北船木漁協ではアユ(コアユ)やウグイ、ビワマスなどを捕らえる。漁の現場では卸売業者への引き渡しだけでなく、小売りも行われる。
 組合長の木村常男さん(63)によると、昨夏の猛暑と冬の大雪の影響で魚の産卵が遅れ、コアユの水揚げの盛期は例年より遅れそうという。「私が子どもの頃に比べて魚の量は減ったが、今も簗ができるのを待って買いに来てくれる人がいる。なんとしても漁を次代に伝えていきたい」と話す。
 簗を訪ねてきた福井県小浜市の鈴木健三さん(75)は毎年、安曇川のコアユをまとめ買い、サンショウ煮にするという。「日本海の魚もおいしいが、アユも欠かせない。新鮮で安いから必ず来ます」。
 琵琶湖では小型定置網(えり)漁が一年を通じて行われているが、この時期は季節限定の伝統漁法も本格化する。湖岸のアユの群れをカラスなどの羽をつけた棒で網へ追い込む「追(おい)さで網漁業」や沖でのすくい網漁、ヨシ帯付近に漁具を置きコイやフナを捕る漁などは、いずれも湖岸からも目にすることができる。また、個人で投網を楽しむ姿も増えてくる。
 北船木漁協の簗は見学もできる。問い合わせは同漁協TEL0740(34)0005。

川魚店の店頭 メニュー多彩

ウグイの煮付けとえび豆を調理する竹端さん(大津市)
 川魚店の店頭メニューも多彩になる。創業80年以上という「大津屋魚店」(大津市末広町)を訪ねると、台所ではウグイの煮付けと「えび豆」の調理が進んでいた。
 「ウグイは今が一番おいしい。滋賀ではタケノコといっしょに炊きます」と竹端悦子さん(75)。大鍋に竹の皮を敷いてウグイを重ね、しょうゆと砂糖、みりん、酒、ショウガで炊きあげる。
 琵琶湖産のスジエビと大豆を炊き合わせる「えび豆」は滋賀では最もポピュラーな一品。ご飯にも酒にも合う。竹端さんも先代から受け継いだ味で仕上げるが、エビだけの販売も。「みなさん、その家に伝わる味加減を伝えておられます」。

コアユに挑戦 釣れ始めると次々、数十匹に

釣れたコアユと福井敏明さん
 魚に親しむには釣りが一番−。そう思いついて、今がシーズンのコアユ釣りに挑戦した。
 「師匠」をお願いしたのは、インターネットで人気サイト「淡水小物釣り」を運営する福井敏明さん(62)=京都市山科区=だ。
 福井さんが指定したのは小さな川が流れ込む大津市の湖畔。福井さんの釣りざおと仕掛けもお借りした。
 10本ほどの針が枝のようについたサビキ仕掛けを利用。針に餌は付けず、仕掛けの一部に小さな針金のらせんをつけてまき餌を練り込む。まき餌は福井さんの手製。釜揚げシラスをつぶし小麦粉などと練ったものだ。
 仕掛けを琵琶湖に投げ、さおをしゃくるように上げ下げすると早速手応えが。引き上げると銀色に光る魚体が二つ。コアユは群れでいるため、釣れ始めると次々とかかる。夢中になり、気が付いたら数十匹。福井さんも多い時は数百匹を釣り上げるという。
 「コアユやモロコなど琵琶湖の小物釣りは特別な道具も不要で費用もわずか。食べてもおいしく、本当に誰にでも楽しめる」と福井さん。仕掛けを手作りするなど、わずかな工夫で釣果が変わることも魅力だという。
【2011年5月18日掲載】