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ひと味違う「緑の奥座敷」

気軽に足延ばせば別天地
越畑で人気の地元産手打ちそば。週末には行楽客らが行列をつくる日もある(京都市右京区・越畑フレンドパークまつばら)

 晴れやかな空が広がる絶好の行楽シーズンに胸も躍る。新緑が滴る季節、京都市中心部から気軽に足を延ばせる市内の山間地も少なくない。有名どころの久多や大原などとはひと味違った「奥座敷」の魅力を巡った。


■美しい棚田広がる 地元産のそば人気 越畑(右京区)
 最初に訪れた越畑地域は右京区西北端に位置する山間農村だ。水尾をさらに奥へ進んだ南丹市との境目で、JR八木駅(南丹市)から京都交通バスに30分ほど乗り、越畑フレンドパーク前で下車した方が行きやすい。
 歩いてほどなく、越畑の斜面に広がる棚田が美しい。サイクリングを楽しむ人でにぎわい、周辺の田畑で写真を撮影する人も多い。観光客の目当ての一つは、農事組合法人越畑フレンドパークまつばら(火曜定休)の地元産手打ちそばだ。週末は行列ができるほどの十割(とわり)のそばは風味豊かで山菜の天ぷらやデザートのそばプリンも楽しみたい。
 同法人は過疎化対策で住民たちが11年前に立ち上げた。地元にある農産物や風景を観光資源として掘り起こし、成功させた住民手作りの事例といえる。
 同法人の吉田達男代表理事(64)は「最初は心配したが、越畑のそばとして定着した。美しい自然に囲まれた場所でそばうち体験や農園もある。市中心部からも気軽に来られますよ」と話す。

心安らぐ天皇陵 水尾(右京区)

水尾の山中にある清和天皇陵。訪れる人は少ないが、厳かな空気が流れていた(京都市右京区)
 JR保津峡駅からユズの里で知られる水尾へ。距離は約4キロ。新緑を楽しみながら歩くにはちょうどよい。
 ゆっくり歩いて約50分で着いた。ユズの木々と棚田が織りなす光景が目にしみる。小休止の後、さらに水尾山中の清和天皇陵へ向かった。
 鳥のさえずりを聞きながらつづら折りの山道を約20分歩くと石畳が見えてきた。誰もいない静かな天皇陵にたたずむ社が心を落ち着かせる。水尾を愛し、隠棲した清和天皇の心が分かる気がした。
 地区にはユズ風呂と鳥すきを提供する家が9軒あり、秋の収穫時期には愛宕山帰りの登山客でにぎわう。水尾保勝会の辻忠夫会長(70)は「6月上旬はユズの白い花を見られるよい季節です」と話す。

比叡山も望める 奥嵐山、清滝(西京、右京区)

【上】嵐山の奥から京都市内を眺める子どもたち。比叡山や双ケ丘、大文字山などが一望できる(京都市西京区・千光寺)【下】空也が修行した場と伝わる「空也滝」。清滝の奥の静かな空間にただ滝の音だけが響く(右京区)
 有名観光地の嵐山も少し足を延ばすと違った魅力がある。渡月橋南側の道を大堰川沿いにさかのぼり、石段を上がると山上の千光寺(西京区)に着く。
 大悲閣と称される同寺では江戸期、川の開削に取り組んだ豪商角倉了以(すみのくらりょうい)が工事従事者を弔った。間近で見られる了以の木像や市内を見渡せる眺望があり、「晴れた日は比叡山や双ケ丘を望めるが、嵐山の観光客にはあまり知られていない」(同寺)穴場とされる。
 さらに嵐電嵐山駅から清滝方面へ空也が修行したと伝わる空也滝(右京区)を自転車で目指した。薄暗いトンネルを抜け、山道では息もあがる。約45分で月輪寺参道との分かれ道に空也滝の看板を見つけた。落差約12メートルは京都市内最大級。誰もいない滝には水の落ちる音だけが響き精神がとぎすまされていく気がした。
 愛宕山ふもとの駐車場で働く女性は「空也滝は行く人は少ないけれど、冬に修行で入る人もいてるよ」と教えてくれた。愛宕山詣での際に寄り道するのもよさそうだ。

山奥には経塚も 陀羅谷(伏見区)

付近の住民を見守る陀羅谷稲荷大明神。毎年9月に営む献灯御百灯祭は地域をあげての行事だ(京都市伏見区)

 集落にわずか6軒しかない通称陀羅谷(だらだに)(伏見区醍醐一ノ切〜三ノ切)は京都市の最東端。山あいの集落には田植えを終えたばかりの田んぼや夏野菜の苗が育つ畑がこじんまりと広がる。
 集落の外れに地域を見守る陀羅谷稲荷大明神を訪ねると、一対のキツネ像がひっそりとたたずんでいた。由来書では江戸期以前から伝わるという。今でも毎年9月に100本のろうそくをまつる百燈(とう)祭が営まれるそうだ。
 陀羅谷は、上醍醐北側で大津市との境目にある。京都側からは細い山道のため、大津から回ると格段に行きやすい。
 地域最年長の大橋九兵衛さん(82)は「かつて醍醐寺の領域で石山寺へ抜ける通り道にあり、稲荷もその影響で建ったのでしょう。山奥に陀羅尼経を納めたと伝わる地域名の由来の経塚もあります」と解説してくれた。6月はアジサイも美しいという。

■水は多めに持って
 近場のハイキングといえども気をつけるべき点は多い。京都府ウオーキング協会(下京区)の森田裕会長は「今は新緑で郊外に出かけるにはよい季節です。でも飲料水がない行き先では水を多めに持ち、こまめな水分補給が必要。トイレがない所もあるので事前の確認もいる。夏場に向け、暑さ対策の帽子も必要で雨具も持っていったほうがよい」とアドバイスする。

【2011年5月25日掲載】