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納涼床変貌 敷居低く

料理ジャンル多様、手ごろな価格の店も
カジュアルな雰囲気の納涼床。手ごろな値段で若者も風情を楽しめる(5月31日午後6時37分、京都市下京区木屋町通団栗橋下ル・イカリヤ食堂)
 京都の夏に欠かせない風物詩「納涼床」。かつては高級料理店が大半を占め、富裕層や仕事の接待、観光客らが利用する特別の存在だった。しかしここ10年間、床を設置する店が急増し、イタリアンやタイ料理などジャンルも多様化した。手ごろな価格の店も次々と登場し、若者でも気軽に風情を楽しめるようになってきた。

■設置、10年前の6割増 いす席も取り入れ

 「京都初のビストロ床」と自任するのは、今年4月、鴨川沿いにオープンしたイカリヤ食堂(京都市下京区)。煮込みや肉料理が千円前後からあり、1人4千円ほどで料理とお酒が楽しめる。カラフルなテーブルクロスが明るい雰囲気を作り、心地よくくつろげそうだ。
 若いカップルやグループの利用が多く、週末は予約で満員になるという。床は初めての会社員平雅行さん(27)と妻の利恵さん(27)=和歌山市=は「敷居が高いと思っていたので、手ごろな値段の店があってうれしい。やっぱり風情がありますね」と喜ぶ。
 京都鴨川納涼床協同組合によると、二条―五条間に床を出す飲食店は、1953年に約30店だったが、2000年ごろには60店になり、今年は約95店に増えた。ジャンルも日本料理から、フレンチや中華、居酒屋まで多様になり、客層の裾野が広がった。営業期間も、従来は本床と言われる6〜8月の夕刻からだったが、1999年から5月と9月を増やし、翌年からは5、9月だけ昼間の営業を始めた。
 期間の延長について事務局の「もち料理きた村」の北村保尚さん(53)は「せっかくお金をかけて床を出しても、すぐに梅雨入りしてしまう。少しでも長く楽しんでもらおうと考えた。本床中は、衛生上の理由で昼間の営業はしていない」と話す。
 老舗店も変わりつつある。床と言えば座敷が当たり前だったが、最近は日本料理店もいす席を取り入れ始めた。京料理「幾松」は約10年前から和いすも使う。ひざが痛くて座敷は嫌だというお年寄りが増えたためで、組合理事長も務める専務の久保明彦さん(56)は「悩んだが、時代に合わせた方がいいと決断した」。希望に合わせ、座敷と併用しているという。北村さんも「今は座敷だけだがいす席も検討している」と打ち明ける。

雨対策しっかり

客の要望に応じ、いす席を取り入れ、座敷と併用している。時代の流れに老舗も模索を続ける(5月31日午後7時12分、京都市中京区木屋町通御池上ル・幾松)
 一番心配なのが突然の雨だ。鳥料理「鳥初鴨川」の尾ア敦彦さん(45)は「室内に同じ席数を確保してあるので大丈夫。安心して楽しんでいただけます」と話す。ただ、雨が降ると、店員たちは、客を室内へ誘導したり食事を運んだり、てんてこ舞いになる。雨がやんだらまた外に出たいと言う要望にも備えるため、欄干やござがぬれないようにすばやい対応も大切だ。
 床の季節は、1日に何度も天気予報をチェックするという。今年は昨年より18日も早く梅雨入りした。「床を楽しみにしている方が多いので、正直残念です」と声を落とした。

若者向けにマナー伝えるリーフレット

床の利用が初めてという客も多く、リーフレットを作成しマナーを伝えている(京都市中京区・スターバックスコーヒー京都三条大橋店)
 誰でも気軽に楽しめるようにと、喫茶を始めた店もある。京都市左京区・貴船の旅館料理「右源太」は、今年から川床でカフェの営業を始めた。夏の繁忙期を除く期間の予定だが、午後の時間帯に、清流の上にしつらえられた川床の風情をリーズナブルに味わえる。
 06年から床を始めた中京区のスターバックスコーヒー京都三条大橋店は、若者向けに床のマナーを伝えるリーフレットを作成した。「ご利用の際のルール」として「長居は無粋」「ペットは入れない」「勉強は禁止」など6カ条の注意点や、歴史も紹介している。

カジュアル化

 現代風俗研究会会員の斎藤光・京都精華大教授 かつて先斗町は金持ちや文化人しか行かない花街だったが、1990年代から一般市民も行ける気軽な店が増え、『カジュアル化』した。それに伴い納涼床も同じようにカジュアル化してきたということだろう。バブルがはじけ、接待も減り、店側もお客を選ぶ時代ではなくなり、多くの人が何度も行ける価格帯に設定せざるをえないのではないか。江戸時代、床は鴨川の中州にあり、食事客だけでなく縁日の雰囲気があり庶民が夕涼みしていた。いろんな課題があるだろうが、個人的には当時の床の復活を望んでいる。