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しぶちんツアーで再発見

三条会商店街〜二条城界わい漫画家グレゴリ青山さんと歩く
上・新旧の魅力が混在する京都三条会商店街。八坂神社御供社(右)には祇園祭の神輿が立ち寄る(京都市中京区)
下・今回のしぶちんツアーの訪問地

 京名所巡りもいいけれど、寺社拝観や食事が高くついてかなわん。そうお嘆きのあなた。散財せずとも、少し目線を変えれば、京都の粋を感じる「ねうちもん」があるのに気付いていないだけでは?
 「しぶちん(倹約)こそが京の文化」という京都市出身の漫画家グレゴリ青山さんと一緒に、京都三条会商店街−二条城界わい(中京区)へしぶちんツアーに出掛けました。

 グレゴリさんの実家からも近いという三条会商店街は、堀川通−千本通をつなぎ、100年近い歴史を誇る。

 近くの町家を改修したインド料理店「ラトナカフェ」で待ち合わせ。うなぎの寝床状の店内では、観光客が高い天井や太い梁(はり)を珍しそうに撮影していた。

 昼食後、商店街を東から西へ歩く。青果に鮮魚、和菓子に仕出しと多様な店が並ぶが、目立つのが店頭を渋く飾る古い木の看板だ。中には由緒ありそうな「味噌」の看板を掲げる中華料理店も。首をかしげていると「もったいない精神の表れでしょうか」とグレゴリさんが謎解きに挑む。「京都はリサイクル店も多く、古本市や骨董(こっとう)市が盛んなのも倹約意識が高いからでは」

 一見普通のエスニック雑貨店「PAO LIFE」をのぞく。アジアの民芸品の横に、なぜか安価な食器や靴下が並び、奥には数十万円の観音像が。「わら製の背負子(しょいこ)は?」と尋ねるグレゴリさんに、「完売です。洗濯かごや植木鉢のかごにと人気で」と店員さん。「コンセプト不明だけど、宝探しする感覚が楽しい」。確かに、おじいさんから主婦、学生、小学生女子まで客層がやたらに幅広い。

 茶舗「矢野自作園」が誇るのは京都らしい「進取の気風」。昭和30年に「京都で最初に抹茶ソフトクリームを売り出した店」として地元で知られる。

 「夏は茶が売れんから」と発売したが、当初は同業者に冷淡な目で見られたという。今の普及ぶりからは意外だが、先駆者が逆風を受けるのは「どの世界も同じ」と2人で納得し合った。

 「幕末から続く老舗もあれば新しいカフェやスイーツの店もある。乙女からおっちゃんまで楽しめるのがこの商店街の魅力」というグレゴリさんの言葉にうなずいた。

樹齢850年マニア垂涎

青々とこけむしたご神木のエノキに手を触れ、パワーをいただくグレゴリ青山さん。「顔はヒミツ」と自作のお面を付けてもらった(中京区・武信稲荷神社)

 商店街のすぐ南にあるのが武信稲荷神社。坂本龍馬とおりょうのデート場所として知られるが、グレゴリさんは「巨木マニア垂涎(すいぜん)のご神木も必見です」。

 鳥居をくぐると、本殿の隣に樹齢850年という立派なエノキがそびえ、幹を覆うコケが青々と輝いていた。なぜこれほどの巨木がこんな街中に…。しかも太い根は敷石を押し上げ、幹は隣の祠(ほこら)にぶつかりそうな豪快さ。

 「ここ数十年で成長が再び加速化し、太さが1・5倍になった。普通なら樹勢も衰えるんですが」と仲尾宗泰宮司。体力低下が著しい四十路過ぎの身には「希望の木」に映り、ありがたく拝んだ。

懐の深いコース 4時間余りねうちもん実感

絵 グレゴリ青山

 2本北の御池通に向かい、神泉苑へ。平安京の面影を残す数少ない遺構で、国の史跡。祇園祭発祥の地でもある。「こんなに由緒ある庭園が入場無料なのがすごい」とグレゴリさんはうれしそうだ。朱塗りの橋が架かった池には船が浮かび、いにしえの遊宴の様子に思いをはせる。

 もとは今の約15倍もあった神泉苑の敷地を削り、徳川家康が築いたのが二条城だ。外国人観光客がぐっと増える。絢爛(けんらん)豪華な唐門をくぐり、国宝・二の丸御殿へ。鶯(うぐいす)張りの廊下、狩野派の障壁画、欄間の彫刻、精緻な錺(かざり)金具…と豪華を極めた装飾に「田舎から来た大名たちよ、どやっ!と言わんばかり」とグレゴリさんもため息まじり。さらに大広間四の間の「松鷹図」に目を凝らす。「公家や社寺文化の女性的でみやびな印象が強い京都では、武家文化の『男だぜ!』というにおいがぷんぷんして、特別な感じです」

 この日のルートを振り返れば、庶民−公家−武家と主役が移り、京町家から信仰の場、世界遺産まで含む懐の深さを感じるコース。1人当たりの出費は入城料600円とカレーランチ千円に、商店街で買った抹茶ソフト160円、おからドーナツ90円とさい銭のみ。「ねうちもん京都観光」を実感する4時間余りだった。

名所巡り面倒くさがらずに グレゴリさん近著通の楽しみ方紹介

いずれもメディアファクトリー刊「ねうちもん京都」から((c)2011Guregori Aoyama)

 グレゴリ青山さんは近著「ねうちもん京都〜お金をかけずに京めぐり」(メディアファクトリー)の中で、王道の観光名所を押さえつつ、ちょっと通な楽しみ方もできるノウハウを紹介する。

 清水寺や祇園、金閣寺や東寺、大原三千院など20カ所とその周辺で「食べる・観(み)る・買う」のツボを絵入りで紹介、近くの商店街や骨董(こっとう)市もルポした。京都出身でない菓子職人や僧侶、書店員らとの散策では、興味や嗜好(しこう)によって巡るコースが全く違うが、どれもが奥深い世界につながる醍醐(だいご)味に感心する。

 グレゴリさんは「名所巡りという観光客は簡単にできることが、地元の人は『いつでも行ける』となかなかできない。面倒くさがったり、拝観料をしぶることは、実は京都人が一番嫌う『もったいないこと』なのでは」と指摘する。

【2011年6月29日掲載】