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琵琶湖文化館 情報発信へシフト

九州国博での湖の国の名宝展 予想上回る反響
「湖の国の名宝展」で、琵琶湖文化館の仏像に関心を寄せる来館者(昨年7月)=九州国立博物館提供

 滋賀県が県内の豊かな文化財を観光に生かす取り組みに力を入れ始めた。その拠点となるのが、老朽化と県の財政難で3年前に休館した琵琶湖文化館(大津市)。仏像から考古資料まで、幅広いコレクションをどう活用していくのか。文化館の取り組みを取材した。

 「滋賀の文化に感動した」「次の巡回先はどこか」。昨年秋、九州国立博物館(福岡県太宰府市)を通じて琵琶湖文化館にこうした手紙が寄せられた。同博物館で開かれた「湖の国の名宝展」に対する反響だ。

 同展には国宝や重文など計106点を出品。これほどの規模の外部貸し出しは初の試みだったが、8万4322人が訪れ大盛況に終わった。同博物館の三輪嘉六館長は「九州では滋賀の文化に触れる機会が少ないが、滋賀と福岡は天台宗を通じてゆかりがあり、今後もこうした展示を続けたい」と期待を込めて語った。

8割が寄託品 無住の寺増え

九州国立博物館への移送を前に重要文化財の木造阿弥陀如来坐像(高島市・洞照寺所蔵)を点検する関係者(大津市打出浜・琵琶湖文化館)

 琵琶湖文化館は1961年に開館。絵画や彫刻、工芸品から歴史、民俗資料など約8千点を収蔵。このうち国宝は17点、重文は197点、県指定文化財は2394点で、国宝と重要文化財を合わせた収蔵件数では全国の博物館の中で6位だ。

 収蔵件数の8割を寄託品が占めるのが特徴。県内各地で無住の寺が増えていることが背景にあり、休館後も地域の文化財保護に重要な役割を果たしてきた。

検討委、年度内に施策提言へ

「神仏います近江」展に琵琶湖文化館が出展する重要文化財「銅造薬師如来立像」(大津市・聖衆来迎寺所蔵)

 こうした中、県は九州国博での予想を超える反響を受け、県外への情報発信に文化館を本格活用する準備を始めている。さっそく本年度、有識者による検討委員会を設置。仏教美術を中心に文化館の文化財を観光に生かすための視点設定や、県民にも関心を高めてもらう施策づくりなどが話し合われている。検討委は計5回論議を行い、年度内に県への提言をまとめる方針だ。

 収集、収蔵から情報発信にシフトしようという文化館だが、財源的には厳しいのが現実。老朽化した施設の建て替えなどはまったくの白紙で、保管環境を維持するのに懸命な状態が続いている。


 「神仏います近江」展 甲賀市のMIHO MUSEUMと大津市の県立近代美術館、大津市歴史博物館が共同開催。琵琶湖文化館の収蔵品や県内の社寺が所蔵する仏像なども展示する。MIHO MUSEUMは9月3日〜12月11日、県立美術館は9月17日〜11月20日、大津歴博は10月8日〜11月23日まで。

文化財 観光に生かせ

滋賀県の豊かな文化財を収蔵している琵琶湖文化館。2008年4月から休館している

 一方で、「友の会」という地元の応援団が存続していることは文化館にとっては心強い。休館で常設展や企画展の無料鑑賞といった会員特典はなくなったが、県内の文化財の見学や講座などの活動は続けている。

 友の会会長の穂積實さん(77)は「休館で県民が地元の文化財を見ることができないのは問題だが、私たちもこれまで以上に学び発信していきたい」。

 文化館のコレクションが活躍する展示が近く開かれる。県内3カ所の博物館が滋賀の宗教文化を共通テーマに行う共同企画「神仏います近江」展。文化館から仏像など約40点が出展される予定だ。

 文化館学芸員の井上ひろ美さんは「『文化財の保存が博物館の役割』というのは古い考えになっている。収蔵品を活用して文化財への関心を高めてもらうことが、先人の残したものを後世に伝える力になる」と強調する。

【2011年7月27日掲載】