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宿坊で日本文化堪能

朝のお勤めたっぷり
朝のお勤めを終え、住職の法話を聞く宿泊客(京都市右京区・大心院)
 寺院に泊まり、朝のお勤めなどを体験できる宿坊での宿泊が注目されている。安く泊まれる寺から、高級ホテルのような豪華な会館まで、多彩な宿泊施設がある京都市内で宿坊の魅力を探った。

宿泊費・施設 形態は多様

外国人宿泊客も一緒にシンプルな朝食をいただく(右京区・大心院)

 昔ながらのたたずまいの寺で宿泊できる臨済宗の妙心寺(右京区)塔頭、大心院を夕刻に訪れると、寺の家族が温かく迎えてくれた。禅寺らしく、質実な雰囲気で枯山水の「阿吽(あうん)庭」が美しい。

 風呂やトイレは共同だが、和室は冷房が付いて快適だ。風呂上がりに庭を眺めて涼むのも心地よい。消灯は午後10時。テレビもなく、虫の鳴き声だけが聞こえる中で寝入った。

 午前6時からのお勤めは希望制で4人が参加。座ってお経を聞きながら仏教の世界に浸る。読経後に聞く住職の法話もありがたい。般若心経の意味を聞き、たっぷり1時間半のお勤めを終えた。

 朝食を共にした10人の宿泊客の中には外国人が6人もいた。もやしのおひたしやごま豆腐など、さっぱりとした精進料理を味わう。日本の生活を堪能して1泊4700円は満足度が高い。フランスから来たオードレー・アイゼナワーさん(36)は「宿坊はシンプルで居心地がいい。寺なので何かよい気を感じます」と話していた。

 日本の文化と生活を体験できる宿坊は外国人の関心が高く、宿泊料の安さから日本の若者にも人気があるという。津田清章住職(71)は「ただ、体験目的でお寺を参る意識が薄い人も見受ける。日本人もお勤めで今一度日本文化を見直し、仏教のよさに気づいてほしい」と話す。

 宿坊にもいろいろな形態がある。真言宗の智積院(東山区)の智積院会館は、鉄筋造りの会館方式の宿坊だ。和室にはテレビや浴衣、タオルも付き、普通の旅館と変わらない。トイレと風呂は共同だが、朝食のみは6500円と値ごろ感があり。「朝のお勤めを体験できるため、修学旅行生もよく訪れる」(同会館)という。

 お勤めは宿泊客は全員参加が原則。午前6時に金堂に入り、密教ならではの雰囲気の中で居並ぶ僧侶の声明に聞き入る。さらに明王殿に移動して護摩焚(ごまた)きも見学。打ち鳴らす太鼓の音を聞きながら、燃え上がる炎を見つめると朝から陶酔感に包まれた。

 お勤めの後は、僧侶の解説付きで名勝庭園を拝観できる。観光客でにぎわう前にお茶を飲みながらゆっくり庭を眺めるのは宿泊客ならではのぜいたくだ。長谷川等伯の障壁画もじっくりと楽しむことができ、東京都から訪れた榎本京子さん(53)は「勤行はキリスト教のミサと相通じるものがあり、神秘的。真剣な修行の様子が伝わります」と満足していた。

知恩院和順会館 調度品、絵画にこだわり高級ホテル並み内装

こだわりの調度品や美術品をふんだんに使用した高級感あふれる洋室(東山区・知恩院和順会館)

 浄土宗宗祖法然の800年遠忌に合わせ、2月に改装工事が完成したばかりの知恩院和順会館(東山区)は、高級ホテルのような豪華さが話題を呼んでいる。

 かかった費用は参道など周辺整備を含め、約30億円。館内の調度品や絵画にもこだわりを感じる。しっくいの壁、木の天井、水の流れをイメージしたじゅうたんなど、デザイナーズホテルのような豪華な内装は宿坊のイメージからはほど遠い。

 国宝の三門を間近に眺められる和室もあり、希望者は朝のお勤めにも参加できる。2食付きで1泊1万2810円からで、同寺は「従来の宿泊客はほとんど門徒だったが、今後は一般客の割合を3割程度まで引き上げ、宿泊を通じて宗派への理解を進めたい」としている。

地元の人も気分転換に

 「お寺に泊まる京都散歩」などの著書がある寺旅研究家の吉田さらささん 食事なしで風呂は銭湯という安い宿坊がある一方、ホテル並みの宿坊もある。宿坊が千差万別で混在しているのが京都の面白いところ。寺に泊まると朝のお勤めで宗派の違いもよく分かります。地元の人もたまに泊まるとよい気分転換になりますよ。

【2011年8月17日掲載】