京都新聞TOP > 観光アーカイブ > 京都・滋賀観光深堀り
インデックス

太鼓踊り 次世代へ

担い手不足、危機感強め復活 長浜・下余呉
6年ぶりに披露された「下余呉太鼓踊り」。夏休みに入って以後、連日、練習が続けられた(長浜市余呉町下余呉)

 県最北部、長浜市余呉町下余呉地区の体育館。化粧をして着飾った少年たちが大太鼓や小太鼓、鉦(かね)を手に登場すると詰めかけた住民から盛んな拍手がわき起こった。地域伝統の「下余呉太鼓踊り」。披露されるのは実に6年ぶりだ。

 下余呉太鼓踊りは地元の乎弥(おみ)神社に奉納する舞で県選択無形民俗文化財。大太鼓の周りを、小太鼓と鉦が独特の振り付けで踊る。踊り手の小4〜中3の少年たちは裾を絞った華やかな「カルサン」というはかまを身に着ける。周囲では女の子が歌や笛を担当する。

 花形は小太鼓だ。担当する小4〜6年の少年5人は、真っ黒な鳥の羽を飾った冠「シャグマ」をかぶる。踊りはシンプルな舞の繰り返しだが、華やかさと妖艶さを併せ持つ独特の雰囲気があり、次第に見る人たちを圧倒していく。打ち鳴らす太鼓の音は雷鳴を模しているといわれる。

 踊りが中断していたのは適齢の男の子がそろわなかったため。しかし、地元自治会と青少年育成委員会が「経験者を途切れさせたら本当にすたれてしまう」と危機感を強め復活にこぎ着けた。西野茂・自治会長は「雨のため神社で踊りができず残念だったが、これを機になんとか続けていきたい」と感無量の様子だった。

5年に1回開催、エネルギー集中 米原・上野

5年に1度奉納される伊吹山太鼓踊り(2010年10月、米原市上野)

 太鼓踊りは西日本一帯で広く行われているが、滋賀県内では湖北、湖東を中心に各地で受け継がれている。伊吹山麓の地域は10集落に伝承がある。伊吹山周辺は岐阜県側にも太鼓踊りが伝わる「太鼓文化圏」だ。

 伝承はあるが中断に追い込まれる地域もある。今年は長浜市西浅井町に伝わる踊りが戦後初めて中止された。地域の人は「踊りの担い手がいない。夏の暑い盛りに重い衣装を着けて踊るには若い人でないと無理。再開は当面難しい」と打ち明ける。

 こうした中、保存会を結成し、数年ごとの奉納で伝統をつないでいる地域もある。米原市上野の「伊吹山奉納太鼓踊り」は5年に1回の開催でエネルギーを集中。昨年の奉納では100人を超える踊り手が参加する盛り上がりを見せた。

おはな踊り通じ地域の結束強く 甲良町北落

 湖東の甲良町北落の「おはな踊り」は、深刻な干ばつに悩まされ続けた地域の歴史を今に伝える。湖東平野は利水ダムができるまで夏の水不足がひどく、水をめぐる深刻な地域対立の記憶も生々しいという。それだけに踊りの伝承には熱心。8月の奉納に向け毎夜、練習が繰り返される。

 今年は予想外の大雨で中止を余儀なくされた。保存会長の辻川公夫さん(63)は「おはな踊りを通じて地域の結束も強くなっている。踊りの背景も合わせて次世代に伝えたい」。

しきたりを柔軟に

長浜市曳山博物館副館長(民俗学)の中島誠一さん

 滋賀の民俗芸能は地域色が濃いことが魅力だ。受け継ぐためにはしきたりを思い切って柔軟にする工夫も必要。実際に太鼓踊りを今も盛んに続けている地域では、昔は参加できなかった女性や次男、三男が踊りの列に入っている。長浜の子ども歌舞伎でも、周辺地域の子どもが「借役者」として出演する伝統は江戸時代からある。伝統は実は柔軟に受け継がれてきたと考える方がいいのではないか。

 さまざまな民俗芸能が伝わる滋賀県でこの時期に盛んなのが「太鼓踊り」だ。雨乞いや豊作祈願の行事だが、過疎や少子高齢化などで継承が困難な事例もあり、地域によって実情は異なってきている。地域色豊かな民俗芸能を受け継ぐ地域を訪ねた。

【2011年8月24日掲載】