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快適?京の観光地トイレ

通路狭く、かばん置けない
JR京都駅の改札外のトイレ。入り口も狭く、紙も付いていない。大きな荷物はつかえてしまう(京都市下京区・JR京都駅構内)

 秋の観光シーズンを迎え、多くの観光客が京都を訪れている。ただ、旅先で心配なのはトイレ。観光客が快適に用を足すためのトイレが国際観光都市の京都でどのように整備されているか、本格的な紅葉の季節を前に駅や観光地で男子トイレを中心に点検した。

 関空特急から降り立った−との想定で、休日のJR京都駅(京都市下京区)から調査を始めた。特急の着くホーム近くのトイレは入り口が狭く、人がすれ違うのがやっと。多目的トイレ以外にかばんを置く場所はなく、スーツケースを持った外国人が戸惑っていた。

 1階の烏丸中央口改札を出たが、トイレの場所が分かりにくい。鉄道案内所横のトイレも通路が狭く、女性用は列ができていた。改札外のトイレに紙は備えてない。京都の玄関口としては不満が残る。

 一方、駅前地下街のポルタのトイレは便座温め機能付きの温水洗浄便座で使いやすい。広めの空間が旅行者にはありがたい。「駅周辺のトイレ事情が悪いと苦情があり、サービス向上の一環として9年前に設置した。おかげで評判はいい」(京都ステーションセンター)という。

有料、エアコン付きで音楽も

100円の利用料を払う有料トイレ。便座と床を自動洗浄。エアコンもあり、音楽も流れる(京都市東山区・清水寺周辺)

 人気観光地の清水寺を訪れ、近くにある京都市の有料トイレに入ってみた。利用料は100円。市内では阪急嵐山駅前にもある。「有料でも快適なトイレを使いたいニーズに応えた」(市環境政策局)といい、年間約6500人が利用するそうだ。

 内部は広く、エアコン付きで音楽も流れる。音声と電光表示の利用案内やおむつ替え用シートもあり、使用後に便座と床を自動洗浄する。利用した会社員三方洋介さん(38)=愛知県=は「観光地のトイレは汚いイメージだったが、清潔でゆっくりできた。100円の価値はある」と満足げだ。

 西の人気スポット嵐山も巡った。嵐電嵐山駅のトイレは清潔で洋式便所もあった。周辺には市の公衆トイレが多い。中ノ島公園には女性に配慮したおむつ替えシート付きの女性専用トイレもある。府の観光案内施設「ぶらり嵐山」には障害者用トイレもあり、観光客にはありがたいだろう。

 市の公衆トイレはほぼすべてに紙が備えてある。だが、参拝料をとらない神社を巡ると、各神社が運営しているトイレ事情は充実しているとは言い難い。参拝者が多い八坂神社(東山区)、修学旅行生が多い北野天満宮(上京区)や平安神宮(左京区)ではトイレに紙が付いていない。人気の金閣寺(北区)でも駐車場など寺外のトイレは紙がない。「多くの観光客が訪れ過ぎて対応が難しい」(平安神宮)という。市の公衆トイレでも直接管理分だけで紙代は年間約53万円かかるといい、管理コストも課題だ。

 また寺社のトイレはほとんどが和式で、外国人観光客が使いにくいとの声もあがる。市内84カ所(公園以外)の市の公衆トイレのうち、観光利用が多い33カ所に洋式トイレが設置されている。だが、多くの外国人を受け入れる京都としては、まだ十分とは言えない。

 外国人観光客向けの冊子ジャーナルキョウトの竹本千賀子編集長は「欧州の観光地は清潔なトイレが多く、歴史的建造物や美術館はまちなかにあり、トイレには困らない。日本では駅などのトイレに紙がなくて驚く外国人が多い。国際観光都市の京都としてはさらに洋式トイレを増やし、紙を完備すべきだ」と指摘している。

集客へ民間も協力

哲学の道を散策する観光客のために、社務所の横にトイレの設置を計画している伊藤宮司(京都市左京区・熊野若王子神社)

 快適なトイレで京都への観光客をもてなすとともに集客も図ろうと、行政や民間が模索を続けている。

 春秋に観光客でにぎわう「哲学の道」の途中には公衆トイレがない。困っている観光客を憂えた熊野若王子神社(左京区)の伊藤快忠宮司(72)は、境内にトイレの設置を検討している。

 地域でトイレは長年の懸案だったが、費用は約300万円かかる。私有地は公衆トイレとならないため、寄付も募ることにした。伊藤宮司は「再来年の大河ドラマは新島襄の妻が主人公。夫妻が眠る墓地への道筋でもあり、トイレはさらに必要になる。観光とトイレは切り離せない問題だ」と話す。

 一方できれいなトイレを整備して客を呼び込む店舗もある。京漬物の西利本店(下京区)では、パウダールーム付きのトイレが広くて使いやすいと女性客に人気だ。平井義久会長は「観光産業で何が最も大切かを考えたら気持ちのよいトイレに行き着いた」という。

 東山区では官民の協力が進んでいる。2004年に区内の社寺や企業で立ち上げた「東山3K協力金会議」では、地元のコンビニや寺院のトイレを「観光トイレ」として市が指定し、開放している。当初の11カ所から現在は48カ所に。「観光客の利用も増えた」(東山区役所)といい、民間の協力で観光客のトイレの悩みの解決を目指している。

 ≪メモ≫ 昔から観光都市だった京都の公衆便所の歴史は古い。戦国期に京都を訪れた宣教師フロイスは家の前にある公衆トイレに驚いたという記録が残る。江戸期には京都の四辻の木戸脇ごとに小便用の桶(おけ)を置いた「辻便所」が整備された。幕末の随筆「守貞謾稿(もりさだまんこう)」には「京阪は路傍のあちこちに尿桶を置いて往来の人に尿を棄てさせる。江戸は路傍に尿を棄てるところがまれにあるのみ」と記されている。

【2011年10月5日掲載】