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「健康」キーワードの観光 脚光

散策と温泉や食セット 診断・治療も
ノルディックウオークのポールを持ち、坂道を登る市民たち。膝への負担も少なく、全身運動になるという(大津市)

 「健康」をキーワードにした新しい観光が注目され始めている。散策と温泉を組み合わせたり、カロリー計算した食事を提供するツアーから、本格的な健康診断や病気治療を目指すツアーまで多彩だ。おいしいものを食べて楽しみながら、健康も気遣いたいという少しぜいたくな思いに応えようと、受け入れ側も試行錯誤している。

 9月下旬の休日、大津市のおごと温泉観光公園に中高年や親子連れ10人余りがスポーツウエア姿で集合した。おごと温泉旅館協同組合主催の「ノルディックウオークツアー」の参加者たちだ。棚田へ向かって出発。ポールを持った腕を大きく振って約1時間歩き、到着後に稲刈りを楽しんだ後、ゆっくりと温泉に身を浸した。

 初参加の池田加奈恵さん(65)=大阪府高槻市=は「上半身も使って体が温まった。自然の中を歩いて汗をかいて温泉にも入れるなんて、本当にすっきりする」と話した。

 同組合は昨年、「美食」の近江牛、ノルディックウオークで五感を刺激する「美運」、温泉の「美浴」を組み合わせた「アクティブヘルスツーリズム」を考案。今春宿泊プランを販売したが、ノルディックの知名度が低いためか振るわなかった。7月から手軽な日帰りツアーを始めたところ、徐々に人気が出てきたという。

 北欧発祥のノルディックウオークはスキーのストックのようなポールを持って歩く。膝への負担が少ないうえ、普通に歩くより運動量が多い、と広い世代に好評だ。今年6月にインストラクター資格を取得した、同公園の小曽根義裕所長(34)は「健康志向が高まる中、需要は必ず伸びる」と自信を見せる。来春に再び宿泊プランの販売も考えている。

※ノルディックウオークツアーの問い合わせは、おごと温泉観光公園TEL077(578)3750。ポールは1日500円で貸し出している。

ヘルシーでストレス発散

歩いたあとは、琵琶湖の見える棚田で稲刈り体験。汗を流し自然に触れあい、体にも心にも優しいツアーを考案中だという

 ヘルスツーリズムは、目的型観光の新たな形態として、観光庁などが力を入れる。大手旅行会社JTBは2005年にヘルスツーリズム研究所を設立し、医療的見地に基づいたプランを作るとともに、自治体などにアドバイスしている。高橋伸佳所長は「一度の旅で健康になる訳ではないが、気持ちが前向きになっている旅先では食や健康法について学ぶ動機付けがしやすい」と話す。

 滋賀県は昨年、琵琶湖や豊かな自然を満喫するツアーに活路を求めようと、県旅行業協会と森林セラピーのためのガイド講習会を開いた。京都市も、観光客創出のため07年に「ニューツーリズム創出事業」を始めた。

 京都ユースホステル協会(京都市右京区)は昨冬、市の助成金を受け、ウオーキングと血糖値をコントロールする京懐石料理を組み合わせた健康ツアーを行った。同協会の佐藤隆芳事業部長は「ヘルシーでストレス発散につながる、お得だと思ってもらえるプランを作りたい」と意気込む。健康をキーワードに新しい観光需要を掘り起こそうとする試みは、今後さらに盛んになりそうだ。

透析患者受け入れ、通訳も

海外から観光で京都を訪れる透析患者を受け入れている京都武田病院。今後も広く展開していきたいと考えている(京都市下京区)

 健康診断や病気治療などの医療と、ホテル宿泊や観光を組み合わせた「メディカルツーリズム」(医療観光)を開拓する試みが京都で始まっている。

 京都武田病院(京都市下京区)は、約5年前から国内外から京都を観光で訪れた透析患者を予約制で受け入れている。透析患者は1週間に3回人工透析が必要とされる。同病院では、海外からの旅行者のために英語通訳スタッフを配置。年間40人近くの利用があるという。

 今年7月には、医療観光で世界的に有名なタイのバンコク病院と提携を結んだ。両国を仕事や観光で行き来する人たちの治療を継続して進めることができるという。武田敏也院長は「世界的な観光地京都に、安心して来てもらえるよう、ほかの事業も検討したい」と話す。

 同病院によると、アジアの医療観光では、韓国の美容整形、タイの心臓・がん治療などが有名だという。日本政府も2010年、新成長戦略の一つに国際医療交流の推進を掲げ、中国人の富裕層をターゲットに挙げた。同年「国際観光医療学会」も設立されたが、通訳の体制や仕組み作りが整っていないうえ、医師不足問題もあり、医療観光を掲げる病院はまだ少ない。

【2011年10月19日掲載】