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禅寺の龍、天に昇る姿さまざま

「鳴き龍」音が1秒間16回往復
日本最古とされる法堂に描かれた「鳴き龍」(京都市上京区・相国寺)

 今年のえとは「辰(たつ)」。京都市内の禅宗の寺院には、法堂(はっとう)の天井やふすまなどにさまざまな龍(りゅう)の姿が描かれている。縁起がよいとされる「昇り龍」。混迷の時代に運気アップを願いながら、龍の姿を追った。

 京都市上京区の相国寺の法堂(重要文化財)は、江戸時代の1605(慶長10)年創建で、現存する最古の法堂とされる。天井に描かれているのは、狩野光信筆の「蟠龍(ばんりゅう)図」。堂内で手を打つ反響音が鳴き声に聞こえることから「鳴き龍」とも呼ばれる。

 手をたたくと、「カラカラ」とも「ブルルン」とも聞こえた。なぜ鳴くのだろうか。臨済宗相国寺派教学部の荒木泰量さん(37)は、広い法堂で大勢の弟子に説法するため、声を反響させる工夫がされていると説明する。須弥壇(しゅみだん)に近い天井の一部分を10センチほどわん曲させるむくりという構造で、1秒間に音が16回往復するという。「鳴き龍」は、その副産物だった。

 観光で訪れた、高瀬典明さん(64)=宇都宮市=は、日光東照宮(栃木県日光市)の鳴(なき)龍も聞いたことがあるという。「日光は手ではなく拍子木でたたくため、もっと甲高い。こちらのほうが威厳がありそう」と比べていた。

仏法守る象徴、火災防ぐ雨もたらす

龍が海中から黒雲を割って昇る姿を表している庭園(東山区・龍吟庵)

 また、ほかの禅寺では、重要文化財の法堂と「雲龍図」(狩野探幽筆)で知られる妙心寺(右京区)、2匹の龍を描いた「双龍図」(小泉淳作筆)の建仁寺(東山区)や加山又造筆の絵がある天龍寺(右京区)などが一般公開されている。有料。天龍寺は土、日曜と祝日、春と秋の公開。「雲龍図」(今尾景年筆)の南禅寺(左京区)と「蒼龍図」(堂本印象筆)の東福寺(東山区)は普段、法堂の内部に入れないが、外部から見ることができる。

 なぜ、禅宗の寺院の法堂には龍が描かれているのだろう。禅文化研究所(中京区)によると、龍は仏法を守る象徴で、師匠から弟子へ法をつなぐ大切な場を見守っているとされる。また、古来、雨をもたらすと考えられてきたため、火災を防いだり「仏法の雨を降らす」意味もあるという。

 妙心寺の朱塗りの三門楼上には、観音菩薩像や十六羅漢像がまつられ、天井にきらびやかな色彩の飛龍が描かれている。同寺法務部の柴山昌実課長は「極楽浄土をイメージしたのではないか。龍を尊ぶ気持ちの表れ」と話す。

 東福寺塔頭の龍吟庵(東山区)には、珍しい「龍の庭」がある。作庭家重森三玲が1964(昭和39)年に手掛けた西庭。方丈庭園を再興する際に、南は白砂のみにこだわり、西は寺名にちなみ意匠をこらしたという。石組みが龍、白砂が海、黒砂が雲を表し、龍が海中から黒雲に包まれて天に昇っていく姿を表現している。

多い「龍」の名前入る寺院

 名前に龍の字が入った寺院は多い。天龍寺の元の名称は「暦応資聖禅寺」だったが、「元号を使用できるのは延暦寺だけ」と禁止されたという。足利尊氏の弟が大堰川から金の龍が天に昇っていく姿を夢で見たことに由来すると伝わる。

 泉涌寺塔頭雲龍院(東山区)は、「泉涌寺の山内で最も高い位置にあり、雲の上から見守る龍との意味を込めて名付けられた」と説明する。天龍寺の栂承昭宗務総長は「龍が仏教にとってそれだけ大切な存在だということを象徴しているのでしょう」と話している。

冬の旅で特別公開 京都市観光協会が催す「京の冬の旅」として、相国寺法堂と妙心寺三門は3月18日まで、東福寺龍吟庵は2月29日まで特別公開している。有料。

【2012年1月18日掲載】