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藤井純一氏 地域の宝になったスポーツ

藤井純一氏 ふじい・じゅんいち 1949年生まれ。日本ハムの福知山営業所、セレッソ大阪社長などを経て2006年に北海道日本ハムファイターズ代表取締役社長。16年から現職。著書に「監督・選手が変わってもなぜ強い?」(光文社新書)。


 プロ野球、特にパ・リーグ各球団には、サッカーJリーグ誕生で強い危機感が生まれ、ファンサービスに力を入れる契機になった。
 私が球団社長を務めた北海道日本ハムファイターズの場合、企業理念が「スポーツコミュニティー」。スポーツが、身近にあるコミュニティー実現を目指す。経営理念は「チャレンジ・ウイズ・ドリーム」で、既成概念に縛られない挑戦をする。活動指針は「ファンサービス・ファースト」とし、すべての活動にファンサービスを優先する。球団の方向性をこのように掲げた。
 野球を競技として見せるだけではない。スポーツエンターテインメントとして、家族で楽しんでいただくことで地域の方々のコミュニティー(社交場)となり、野球が生活の一部になるボールパークを目指した。
 実現のため、次のような企画を段階的に実施し、ファンサービスに力点を置いた。入会にメリットあるファンクラブ設立▽地域のみなさんと一緒に行う植林活動▽ファイターズ農園開設▽道内各地でのサイン会▽各市町村の応援大使などなどだ。
 球団目標には「常に優勝を狙えるチーム作り」を掲げた。この姿勢の浸透を図って地域に開かれ、愛されるチーム作りをどんどん進めた。
 その結果、ファイターズは地域のシンボルに生まれ変わり、多くの皆様に来場いただけるようになった。
 今や、日本には多くのプロスポーツがある。バスケットボール、大相撲、ゴルフ、テニス等だ。アマチュアのアメフット、バレー、あるいは学生スポーツもスポーツ文化を支えており、夢と感動を与えている。
 欧米では、スポーツも地域の文化を支えていると言われる。ドイツの場合、小さな村にもサッカーグラウンドがあり、日曜日には子供たちの試合が行われ、住民がビールとソーセージを片手に応援し、交流する姿を見かける。
 一方、日本で地域のつながりに中心的な役割を果たしてきた祭礼の規模が、少子高齢化で縮小しているようにも感じられる。
 身近な人たちが親しく交わる「地域」が希薄になってきた現在、全国各地で、スポーツを地域活性化に用いた取り組みが進められている。
 成功させるための秘訣(ひけつ)は、住民がひとつになって参加し、スポーツを地域の宝に作り上げていくことだ。球団経営と同じで、目的とビジョンの明確さが必要だろう。それが人を呼び、力となり、地域の新しい文化を作っていくのだと経験的に思う。

(池坊短大学長)

[京都新聞 2017年02月17日掲載]