ソフィア 京都新聞文化会議 京都新聞電子版へ

笹岡隆甫氏 温暖化止め 豊かな四季守ろう
ささおか・りゅうほ 1974年、京都市生まれ。3歳から当代家元笹岡勲甫氏の指導を受ける。2000年、京都大大学院博士後期課程中退。著書に『美的生活のヒント』。

 私たち、現代に生きる華道家の悩みをご存じですか?  少子高齢化による華道人口の減少? 住空間の変化による花を飾る場の喪失? もちろんそれらも大きな問題ですが、私たちが日々心を痛めているのは、枯れた花の後始末なのです。
 その可憐(かれん)な姿で、私たちの日々の暮らしを美しく彩り、仕事や家事で疲れた私たちの心を優しく癒やし、そして、命の尊さをも教えてくれる花。現代の華道家は、務めを終えたその花を、ただごみ箱に捨てることしかできません。その姿は痛々しく、見ていてつらいのです。
 身近に田畑がたくさんあった時代には、枯れた花は、土に還(かえ)すことができました。枯れた花は、肥料として、また新たな命を生み出す手助けができたのです。でも、都市化した現代社会では、なかなかそうはいきません。
 命の終わりを迎えた花を、森林の間伐材や建築の廃木材などとともに、バイオエネルギーとして再利用すべきだ。私は、折に触れて、そう訴えてきました。
 この想(おも)いが通じたようです。昨年の十一月、京都市と京都大学が、家庭から出る生ごみや街路樹の剪定(せんてい)枝などからバイオ燃料をつくる試みをスタートさせました。実用化はもう少し先ですが、おかげで枯れた花をごみ箱に捨てるという悩みから解放される日も近いと、ひとまず、ほっとしています。
 しかし、これで安心してはいられません。私たち華道家にとって、もっと致命的な問題が残っています。
 それは地球規模の環境破壊。地球温暖化やヒートアイランド現象の影響で、京都でも、桜の開花時期が早まり、秋の紅葉が遅れています。このままでは一年中、夏ということにもなりかねません。そう、四季を大切にする日本文化の根底が覆されようとしているのです。
 オーストラリアで皮膚ガンが急増しているのをご存じですか? オゾンホールによる紫外線量増加が影響しているのではないかと言われています。環境破壊はもはや、文化のみならず、われわれ人類の生命をも脅かしているのです。温暖化がオゾン層破壊をくい止めるという説もあるようですが、限りある資源を好き勝手に使っている消費型社会を正当化してはなりません。
 まずはできることから始めてみませんか。レジ袋はもらわない。シャワーや歯磨きの時にはこまめに水を止める。そして、「四季のない日本は嫌だ」「人類の滅亡を避けよう」と、声を上げる。
 声に出して訴えれば、その想いはきっと叶(かな)います。古いものを大事に使うより、新しいものを買った方が安くつく現代社会はどこかおかしい。循環型社会の構築には、再生可能エネルギーの利用や地産地消といった環境に負荷のかからない経済活動に関する優遇措置が不可欠でしょう。行政の重い腰を動かすのは、私たち一人一人の小さな声です。
(華道未生流笹岡次期家元)

[京都新聞 2008年03月16日掲載]